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Channel: 文芸 多度津 弘濱書院
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二泊三日 東京歌舞伎見物旅行 vol.1

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本日は紀行です。
なお、今回の紀行、都合今回と次回の二回に分けてお送りしたいと思います。

イメージ 12018.1.12 金曜日-1.14 日曜日。
今回は東京へ歌舞伎を見に行く。
今話題の高麗屋三代同時襲名公演を見に行くのだ。

東京までの移動には飛行機を使う。
全日空の、ホテルと飛行機の往復券がセットになったプラン。
七時四十分発。

当日はこの冬一番の寒波が到来していた日で雪やなにかで路面凍結の心配もあったが杞憂だった。
七時過ぎ高松空港到着。

イメージ 2飛行機だと東京まですぐ。
八時五十五分、羽田着。
モノレールで浜松町まで出て山手線で新橋に出る。
その山手線の列車がとてもきれいな最新式のやつでびっくりした。
どの世界も日々新たに進化しているのだ。

新橋からタクシーで今宵の宿、ホテルオークラへ。
荷物を預けたら、再びタクシーで歌舞伎座へ。
江戸情緒のある歌舞伎座正面玄関と人の賑わいにびっくり。
中に入る前に昼飯を。

イメージ 3昼はあらかじめ調べてあったシチューの名店、エルベに。
一番人気というミックスシチューランチを頂くことに。
1900円。
この店、歌舞伎座に来る役者さん達もひいきにしている人が多いとか。

歌舞伎座近辺でシチューと言えば、名門「銀乃塔」ということになるそうだが、ここはその系列の店でその銀之塔で修行したお弟子さんが開いた店なのだそうだ。

中に入ると、外人さんのきれいな女の人が丁寧に接客してくれる。
これはポイント高し。
イメージ 4店の奥さんかなにかなのだろうか。
十分か十五分ほどでお料理が運ばれてくる。

丸い鍋の中でシチューがぐつぐつといっている。
ちなみにミックスシチューのミックスとは牛タンとビーフのミックスという意味だそう。
まずは一口。
肉が柔らかい。
シチューのベースのソースはやや辛みの勝ったシンプルな味。

寒い冬にガツンと来る一品。
これを付け合わせのご飯に絡めて食べるともう絶品で。
いやあ、最高の昼食でした。

イメージ 5再び、歌舞伎座。
まずはチケットを持ってない人でも入れる地下二階に。
とそこには江戸の街かと錯覚するように屋台の店がずらりと。
いやあ楽しいなあ。
そのあと、五階を回ったりして一通り見学した後、銀座の街へ繰り出して時間を潰してから再び歌舞伎座へ。
四時歌舞伎座入場。

初めての歌舞伎座。
劇場の中は思っていたより全体に横に広い。
舞台もそれにあわせて横に広い。
イメージ 6これは楽しみだ。

筆者の席は二階席。
一般発売で買ったので、ここを取るのが精いっぱいだった。
しかし遮る物がなく全体を広く見渡せるいい席。
で知ってますか、皆さん。
ここは席で弁当を食べたりお酒を飲んだりできるんですよ。
最近では珍しいですよね。
昔ながらの芝居小屋の風情。

さて、そうこうする内に開演の時間が。
定刻通り四時半開始。
イメージ 7演目一発目は、関取衆とタニマチの町人と武士の話。
タニマチの若旦那と人気遊女の身請け話が、相撲の勝ち負けと並行して進められる。
随所にユーモアがあって笑わせてくれる。

最後、関取二人による差しでの掛け合いは実に見事。
特に名大関、濡髪を演じた中村芝翫さんの芝居は素晴らしかった。
所作に重みがあって全体に独特の風格があってね。
さすがですな。
音楽や唄もいいタイミングで入ってきて場面全体が盛り上がっていたし。
二十五分の休憩。

イメージ 8そして、待ってました、口上。
冒頭、横に広い舞台に役者さんがずらりと横一列に並んで正座して頭を下げている風景は圧巻。
二階席からみると、思わず声を上げてしまいそうになるくらい美しい風景だった。
まさに一糸乱れぬ和の美。

坂田藤十郎さんの挨拶の後、一人一人の役者さんがそれぞれ口上を述べてゆく。
しかし、三代同時襲名ってほんとに目出度いなと。

でも歌舞伎の襲名ってよく出来ている制度だなあと改めて。
かつては一人前の親にしかできないと思われていた至芸が、日が経つにつれ成長した我が子が同じようなことをいつしかちゃんと出来るようになっている。
その次は孫だ。
ああ、気が付かないうちにみんな大きくなってたんだな。
鼻を垂らしたたんなる甘えたれだったあいつが、自分一人じゃ何もできなかったあの子が。
ああ、なんだか一人前になっている。

イメージ 9大げさに言えば、人はそこに生命の神秘を感ずるのだろう。
鮭が生まれ育った川に何故だか正確に戻ってくるような。
そして見る者はその神秘に自分達の家族をなぞらえるのである。
歌舞伎を見るということはそういうことなのかもしれぬ。

しかし、染五郎君はイケメンだな。
それはとてもいいことだと思う。
というのも、何より歌舞伎にさして興味のない人にも興味を持ってもらえるということだから。
天から与えられたその恵みをフルに活かしてこれからの歌舞伎人生を充実したものにしてほしいと思う。

イメージ 10その後、三十分の休憩。
その間に弁当を食べる。
天むす入りの千円くらいのを食べた。
関東風のちょっと濃い味が嬉しい。
美味しかった。

そして勧進帳。
高麗屋の家の芸である。
関守の富樫に人間国宝の中村吉右衛門さん。
やっぱり上手いなあ。
セリフ回しといい、所作といい、全てが完璧で美しい。
特に、途中、一行の一人を義経と勘付いて太刀に手をやりながら、行く手を遮るシーンなど、その立ち姿の美しさには惚れ惚れとした。
見ていると背筋がゾクゾクッとなるような眩暈がするような。

そして弁慶役の松本幸四郎さん。
立派な弁慶だ。
所作一つ、セリフ一つに全てに意味と型がある。
その奥行の深さに伝統を感ずる。
さすがは家の芸。
あれだけこなせるようになるまで一体どれくらいかかったのだろう。
その苦労がしのばれる。
長丁場を見事に演じきった。

脇役も豪華だ。
四天王に雁治郎、芝翫、愛之助、歌六。
どれも主役をはれる人ばかり。

最後に。
幸四郎さんの弁慶について。
今のままでも十分なのだが、更に上を目指すために気になったところをひとつ。
見ていると型は充分に出来ていると思った。
しかしそれが仇となったのかどうだか、何だか型だけがすっと自己主張をしているように見える場面が多々あったように思えた。

野球のピッチングで言うと、外角低めのストレートを形通りに投げ込んではいるものの、ただ外角低めというところに意識ばかりがあって、いわゆる「置きに行っている」感があるような。
投球とは奥が深くて、実際には、球威とか球のキレとか、形だけでは測れない大事な何かが一番大切なのだが、外角低めという「形」だけを追求して、ややもすれば投球が形骸化することがある。
そんな感じが若干した。

例えば吉右衛門さんなどは型を踏襲しながらも、役を生きているのだろう、セリフに魂がこもっていた。
そこの部分で、幸四郎さんとの芝居の質の差を見ていて若干感じたのも事実。
だから幸四郎さんも、これからは型を大事にしながらも、そこにいかに魂を込めるか、いかに弁慶という役を生き抜くのかということを目指して欲しいと思うのである。
そうすると、もっと芸に深みが出ると思う。
役を演じるのではななく、いかに役を生きるか、舞台芸術の奥義はそれだと思う。
これからも頑張って下さい。


安全運行に務めてくれた全日空の皆さんに感謝。
同じく高松空港、羽田空港の皆さんに感謝。
美味しい昼食を提供してくれたエルベの皆さんに感謝。
安全運行に務めてくれたタクシーの皆さんに感謝。
最高の舞台を見せてくれた歌舞伎座に感謝。
高麗屋三代の皆さんに感謝。
脇を固めてくれた名優の皆さんに感謝。
今日も最後まで読んでくれたあなたにありがとう。

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