本日は落語鑑賞記です。
2017.7.8 土曜日 三豊市文化会館マリンウェーブ、全席自由前売り2000円、開場十三時半、開演十四時。
「露の団姫」と書いて「つゆのまるこ」と読む。
それでは団姫さんのプロフィールを簡単に紹介。
1986年生まれ、上方落語協会所属、兵庫県尼崎市在住。
高校卒業を機に露の団四郎に入門。
2011年天台宗で得度。
2012年比叡山行院で四度加行を受け正式な天台僧となる。
年間250席以上の高座と仏教のPRを両立し全国を奔走する異色の落語家。
さて、その団姫さん、もちろん生で見るのは今回が初めてなのだが、実は名前だけは以前から知っていた。
というのも、団姫さんが書いた本が、一時、丸亀ゆめタウンの紀伊國屋書店に置いてあったことがあって、立ち読みしたことがあるのだ。
女の落語家さんと言うのも珍しいが、その上、坊さんもやってらっしゃるとなると猶更珍しい。
その団姫さんが書いた本もちらっと読んだだけだったが、結構面白くて、いつか買おうと思っている内に買いそびれてしまったのだったが。
そんなこんなもあって、何故か名前だけはしっかりと覚えていたのである。
そこへ、何かのコンサートだかでくれたチラシの中に今回の落語会の案内があった。
あっ、あの人かとピンと来た。
値段も2000円と手ごろだし、一度行ってみるかと。
実は落語と仏教と言うのは元々相性がいいらしい。
なんでもその昔、上方で発祥した落語の元祖は僧侶だったという。
難しい説法を面白くおかしく聞かせるため話を工夫したのがその始まりだとか。
その上方の落語の元祖と言われるのが、露の五郎兵衛。
そしてその流れをくむ、露の団四郎師匠の下に弟子入りしたのが団姫さん。
見事に繋がっているのだ。
そんな団姫さん、今日はどんな落語を聞かせてくれるのか楽しみだ。
十四時開演。
正直、客はあまり入ってない。
全部で百人くらいか。
でも今まで色んな舞台芸術を鑑賞してきた経験から言わせてもらうと、数じゃないんだよな。
客の数と舞台の出来と言うのは必ずしも比例しない。
スカスカの客席の中で、びっくりするような出来のコンサートを聞いたことが何回もある。
前半は古典落語。
「時うどん」、定番のやつだ。
まず声の張りがいい。
でもこの噺、本当にあちこちでよく聞くのだけれど、やる人によって全然違う。
団姫さんのも独特のおかしみが工夫されていて存分に笑わせてくれる快演。
噺の筋は分かっているのだけれど、そこへ持って行く演者の手際なんかを味わってみるのも落語ならではの愉しみと言えるのかもしれない。
その後、神楽が入る。
神楽をやるのは豊来家大治朗さん。
後で分かるのだが、この大治朗さん、実は団姫さんの旦那さんなのだ。
しかし生で見る神楽の芸の素晴らしさ。
まずは扇子を顎の上に載せる簡単な芸から入るのだが、そこから始まって果ては棒を高く積んだ先に湯呑を複数載せて口にくわえた棒にそれを載せる、というところまで行く。
とこうやって書いていても頭が混乱してくる。
まあ、生で見ればその凄さが分かります。
また、傘を使って毬を回す芸では、傘の上で回る毬がぴたりと張り付いたようにきれいに回る。
これも最後は角々した升をきれいに回すところがハイライトとなる。
お手玉では、ふつうの三つの玉を投げて回すのから始まって、最後は四本の剣を回す大技を披露してくれる。
最後はよく切れる刃物でぐるりと取り囲まれた輪の中を飛び込んでくぐり抜けるという大技。
見応えがありました。
そして再び落語。
〆は仏教落語とのこと。
まくらでは、団姫さんが仏教と落語に惹かれた若い時の話などが紹介される。
なんでも子供の時から、人が死ぬとどうなるのかと不思議に思ってらしたとのこと。
それで大きくなると聖書を読み、次いでコーランと読み進み、そんな中で仏教に出会ったという。
そんな話の後、創作と思しき噺が始まる。
噺は、死んだ暴走族の若者が地獄極楽の世界を見、様々な仏様と出会う様を面白おかしく語り進めて行く。
聴く方は笑いながら、仏様の知識を得ることができるという、一粒で二度美味しい的な噺となっている。
笑いの取り方も洗練されていて、全体的にとてもよく練られたよくできた噺だと思った。
そして最後は生前の罪を反省し、それを仏様に許され、新たなスタートを切る主人公。
さげもきれいで、笑いの中にさわやかな感動がある。
いいなあ、この路線。
この感じ、これからもずっと大切にしていってほしいです。
笑いと温かさに溢れた一時間半。
今日は来てよかった。
本当にありがとう。
素晴らしい落語を聞かせてくれた露の団姫さんに感謝。
同じく至高の芸を見せてくれた神楽の豊来家大治朗さんに感謝。
そしてこの二人の芸に出会わせてくれた三豊マリンウェーブの皆さんに感謝。
今日も最後まで読んでくれたあなたにありがとう。