本日はコンサート評です。
2017.3.26 日曜日、「いつでも元気が出るコンサート」、吉田正記念オーケストラ、指揮 大沢可直、丸亀市綾歌総合文化会館大ホール、アイレックス、全席指定S席前売り 3500円、十三時三十分開場、十四時開演。
オケは最大編成六十人のマントバーニー・パーシーフェイス型ムードオーケストラとのことで、国産唯一のイージーリスニング専門オーケストラとして2001年に結成されたらしい。
それではこのオケの冠名になっている作曲家、吉田正氏について簡単な紹介を。
1921.1.20 (大正10年) 茨城県生まれ、1988.6.10 没。
日立市出身の国民的歌謡作曲家。
昭和二十年、シベリア抑留、昭和二十三年、舞鶴に復員。
翌、昭和二十四年、日本ビクターに専属作曲家として入社。
昭和三十五年と三十七年に日本レコード大賞。
昭和四十四年、芸術選奨文部大臣賞、昭和五十七年、紫綬褒章、平成四年、勲三等旭日中綬章。
平成十年、死後に国民栄誉賞を贈られる。
生涯作曲数は2400曲を超え、都会的で哀愁漂うメロディーは都会調歌謡と称される。
ムード歌謡から青春歌謡、リズム歌謡まで作風は幅広い。
代表曲に、「有楽町で逢いましょう」、「誰よりも君を愛す」、「いつでも夢を」、など。
と簡単に吉田正さんのことを紹介してきたが、このオケは必ずしも吉田さんの曲ばかりをやるのではないらしい。
吉田さんの曲もやるが他の曲もやるとのこと。
一時半過ぎ、会場に入る。
中にはすでに大勢の人が。
客席は、大体八割方の入りであろうか。
当日券もよく売れていたらしく、二階席の方もけっこう人が入っている模様。
筆者の席は一階真ん中のやや右寄り。
全体をゆったりと見渡せるいい席だ。
午後二時、定刻通り演奏開始。
前半は吉田正交響組曲なるものを。
全部で四楽章から成るクラシック風に作られた組曲で、吉田正作品のメロディーが全編に施されている。
純クラシックでもなく、軽音楽でもない第三の音楽ということらしい。
どんな曲なんだろう、楽しみだ。
オケはフルオーケストラでさすがに音の厚みが違う。
クラシックと違い歌謡曲の場合、その音の魅力(サウンド)はベースラインの美しさにあると筆者は思っているのだが、まるで歩くように軽やかにベースが根を弾く姿をみているとなんだかわくわくしてくる。
組曲の中では、いつでも夢をのメロディーが一番よく出てくるのだが、そのメロディーもただ普通に演奏されるものから始まって、各パート毎にメロディーが移り変わって行くパターンのものや、メロディー自体を変奏したもの、或いは発展展開させたものなど、クラシックの要素を持つ技法が駆使されて、観客を飽きさせない工夫がなされている。
これは筆者の独断だが、吉田正作品の魅力は、洗練された哀愁と、言葉は悪いが、少しバタ臭い感じのする独特の感性の絶妙な組み合わせにあると思う。
そんな吉田作品の絶品メロディーが惜しげもなく次から次へと披露されていく組曲。
最終楽章は、オケの音の鳴りが凄くて盛り上がりました。
ブラヴォー。
休憩後、後半へと。
後半は、吉田正作品以外の古今の名曲を軸に。
最初の曲は「ミスターロンリー」。
FMの名番組、「ジェットストリーム」を模して、指揮者自らがMCと化して登場。
快適な空の旅を連想させる粋な演出。
しかしこの指揮の大沢可直さん、この人が実に面白い人で、最後の方では自ら二曲ほど、オケをバックに自ら歌声を披露していた。
自分で歌を歌ってしまう指揮者って今まで見たことあります?
筆者は初めてです。
ちなみに歌った曲は、愛の讃歌と霧子のタンゴ。
もちろん、本職の歌手ではないから、声量などは至って並というところなのだが、そこは指揮者、どう歌えばいいかという曲のツボはしっかり押さえている。
だから歌唱技術的にはかなり洗練された確かな歌声となっていた。
その他にも、映画音楽の名曲や、オーケストラで演奏することは珍しいというフォークダンスの曲などを披露してくれた。
これは隣の席にいたおばさんからの情報の受け売りなのだが、このオケは通常のクラシックのオケと違って、楽器編成がかなり特殊なオケらしい。
端的にいうとコントラバスとチェロの数がかなり多いのだそう。
それと管楽器が少な目で弦楽器が多いとも。
なるほどね、ポップス専用オーケストラという訳か。
楽曲の合間のトークも指揮者が務める。
が、この話が結構いい。
やっぱり指揮者だけあって、世の中の色々なことに日頃からアンテナを張っているのだろう、
博識で話が面白い。
他に印象に残った曲としては、メンデルスゾーンの「結婚行進曲」とか。
とにかくリズムがしっかりとしていて音も強く、全体的にオケがよく鳴っていた。
また、メンデルスゾーンは日本では必ずしも高い評価を受けている(モーツアルトやベートーベンなどと比べると)作曲家ではないが、実は大変に素晴らしい作曲家だとも。
最後の曲は、国産の行進曲を。
よく七時前のニュースの時間の合間に競輪やボートの予告放送で流れてくるあのメロディーだ。
日本人作曲家が明治以降、西洋に範を取って作った和製クラシックの名曲の数々。
何だか聞いていると往時の苦労に思いを馳せて、胸が熱くなってくる。
最後はあの有名な軍艦マーチで〆る。
やっぱかっこいいな。
アンコールは一曲。
吉田正作品の「異国の丘」を。
あらかじめ配られていたプログラムの紙の裏に歌詞が載っている。
これを皆で歌う。
シベリア抑留の体験を元に書かれた曲だそう。
沁みるねえ。
しかし、本格的なオーケストラの演奏が聞けてこの値段というのはやはりお得だと思う。
合間合間の指揮者の話も面白く、演出も楽しい。
また来たいなと思ったそんなコンサートでした。
大満足の二時間超。
最高の音楽を聞かせてくれた吉田正記念オーケストラのみなさんに感謝。
そのオケの魅力を最大限に引き出してくれ、合間の話も面白かった指揮の大沢さんに感謝。
そしてこのコンサートの潤滑な進行を保証してくれた、アイレックスの皆さんに感謝。
今日も最後まで読んでくれたあなたにありがとう。