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Channel: 文芸 多度津 弘濱書院
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美味シネマ vol.7

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本日は映画とグルメが一緒になったイベントの報告です。

イメージ 1

2017.2.26 日曜日、「美味シネマ vol.7」、高松国際ホテル新館二階「瀬戸の間」、全席自由、5000円。
FM香川の人気映画情報番組「勝手にシネマニア」の特選映画を観た後、高松国際ホテルの松原勉シェフが手掛ける、上映作品にまつわるお料理(フレンチのコース料理)を堪能できる美味しいイベント。
上映作品はフランス映画の「シェフ、三ツ星レストランの舞台裏へようこそ」、監督ダニエル・コーエン、出演ジャン・レノ、ミカエル・ユーンほか。
十五時開場、十五時半開演。

イメージ 2会場となる高松国際ホテルまでは車で約一時間ほど。
県道三十三号線の高松中心部を抜けてそこから東へ十分ほど行ったところにある。
穴吹グループのホテルだそうだ。
とても洗練されたきれいな印象のホテルという感じ。
少し早めに着いたので付属の喫茶店に入って時間を潰す。

そして三時。
会場に行くとすでに七割方、席が埋まっている。
自由席なので皆、動きだしが早いのだろう。

イメージ 3まずは映画を観て、それから食事ということらしい。
映画の会場の隣に食事の会場があって、映画を観終わった後にそっちの方に移動するそうだ。

三時半、映画スタート。
始まる前に軽く映画の紹介がある。
FM香川の「勝手にシネマニア」のパーソナリティ、中井今日子さんと帰来雅基さんの二人の軽妙なトークで。

それでは映画を観ていくことにしよう。

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この映画の主人公の青年、料理の腕は確かだが、余りにも自分の主張が強すぎて、そのせいでどこのレストランへ行っても勤まらない。
この青年、過去の偉大な料理家のレシピが全て頭に入っているという天才肌の職人なのだが、そんな彼が現在勤められる職場と言えば、彼のような若き希望溢れる青年が創り出す高級な味を必要としない客ばかり。
それでも熱く自分の料理の理想を語る彼は、まるで、かつてその強烈な信仰心から道端の小鳥にまで説法したという、アッシジの聖者、聖フランチェスコを彷彿とさせる。

そんな彼だが、まもなく恋人との間に子供が生まれる。
しかしレストランをクビになったばかりの無職の彼。
将来、妻となる女性にそのことを咎められる。
それでやむなく、料理の道を諦め、窓拭きの掃除の仕事に就くことに。

イメージ 5しかし人生とは分からないものだ。
そのいやいや始めた窓拭きの仕事から彼の人生は開けて行くのである。
なんとその窓拭きしている場所が老人向けの介護施設でその縁でそこの厨房に出入りするようになり、そこで彼の創る料理が評判となる訳である。
もちろん最初は、その斬新過ぎる料理が老人たちの大ブーイングに遭うのだが。

そしてもう一人の主人公が、ジャン・レノ演じる三ツ星レストランのシェフ。
しかし、フランスでは泣く子も黙る有名シェフとはいえ、最近は歳のせいか実力は下降気味で、評論家からの評価も芳しくない。
そんな彼に三ツ星レストランの若きオーナーは何かと冷たくあたる。
古臭い伝統料理に固執し過ぎて、コスト的に割に合わないと言うのである。
挙句の果てには彼をクビに追い込むため、次のミシュランの審査で星三つを獲得できなければ解雇すると脅す。

この辺り、冷たい資本の論理と熱い板場の論理がせめぎ合う様はどこの国でも同じなんだなと。
またその資本の論理を体現する若きオーナーの軽薄で嫌味な感じの演技は実に秀逸で、ほんとに嫌な感じがよく出ていたように思う。

イメージ 6そんな落ち目の三ツ星シェフと無名の若き天才料理人とが出会い、物語は動いて行く。
こう書いてしまうと映画に詳しい人なら筋書きは割と簡単に予測できるかと思うが、この手の物語の場合、そういう大方の予想を覆して型を崩していくと見ている方はかえって面白くないということになる。

むしろ逆に期待通りに物語が進んでいって、しかし途中でああ一体どうなるんだろう的なドキドキ感が加わることで、紆余曲折の末、見終わった後、期待通りの結果に幸せな気分に満たされる方が見ている方は面白い訳。
それが喜びの劇、「喜劇」というものの本質なのだと思う。

さらに物語には、離婚している三ツ星シェフの一人娘とのぎくしゃくした関係とか、若き天才料理人の妻となる相手とのいざこざとか、話を彩るスパイスがふんだんに盛り込まれている。
そんなこんなも含めて見所はいっぱい。

イメージ 7その後、会場を移動して食事へと。
食事の準備ができるまでトーク。
中井今日子さんと帰来雅基さんのお二人で。
そこに料理長が登場してきて、大画面で映画のシーンを振り返りながらこれから出てくる料理の話で盛り上がる。

その後はワインソムリエさんなんかも出てきて映画に出てきたワインの薀蓄なんかもたっぷりと。
なんか楽しいね、聞いていてわくわくしてきます。

イメージ 8そうこうする内にお料理が運ばれてくる。
会場は満席で定員百二十名。
だから給仕の方も大変である。

まずは前菜。
海の幸の盛り合わせ。
ホタテにサーモン、えびなどが刺身の状態で出され、そこに酸味の効いた美味しいソースがさらりとかかっている。
素材の旨味が格別。
ねっとりとしていて爽やかな中に濃厚感がある。
いいじゃないですか。

イメージ 9続いてスープ。
まずパンが一切れ、スープなしの皿に置かれた状態で出てくる。
そして後からそこにスープを注ぐ。
スープは人参のスープでとっくりとしたコクが印象的。
また最初に皿に盛ってあったパンは、後からスープをかけるとすぐにふにゃふにゃになって、まるで東北のせんべい汁のような食感に。
人参のスープながら、よく味わってゆくと、トマトスープのような酸味も感ぜられる美味なる一品。

イメージ 10そしてメイン。
ローストビーフと鶏肉の煮込み。
これがまた絶品なんです。
鶏の煮込みはクリームシチューのような感じのソースで煮込まれている。
柔らかっ。

ローストビーフは身に厚みがあって旨いのなんの。
特に脂の部分が口に入るととろけるような肉汁が口の中に広がる。
どこをとっても抜かりのないいい仕事っぷり。
ここまで三品、どれも美味しいな。

イメージ 11
最後はデザート。
パイ生地のミルフィーユにアイスクリームを添えて。
まずアイスクリームがうまい。
しっかりとしたコクと旨味がある。
ミルフィーユはほのかに苦みがあってそこに後から甘みが被さってくる感じで何だか得も言われぬ味なのです。

〆は、コーヒー。
コーヒーはこの春、新しく発売予定の新作ブレンドを今日のためにいち早く用意してくれたとか。
さくらブレンドとか言ってたかな。

イメージ 12ちなみに筆者、昔は酸味のあるコーヒーが苦手で避けて通っていたけれど、最近コーヒーの酸味というのが気になりだしてきた。
例えばモカ。
この日のコーヒーはまさにそういう味。
酸味の効いたバランスのとれた味。
おいしかったあ。

ああでも、今日は本当にいい一日だったな。
映画見て旨いもん食って。
車で来ていたのでワインが飲めなかったのだけが残念だったけど。
その分、家に帰ってからしっかり飲みましたよ。
日本酒だけどね。

イメージ 13
面白い映画を見せてくれたFM香川のみなさん、国際ホテルのみなさん本当にありがとう。
最高の映画、フランスの映画製作者のみなさんに感謝。
珠玉のトーク、中井今日子さんと帰来雅基さんにありがとう。
そして美味しいお料理を提供してくれた松原シェフと厨房のみなさんに感謝。
忙しく働いてくれた給仕さん達にも感謝。
そして今日も最後まで読んでくれたあなたにありがとう。

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