本日はコンサート評です。
2016.7.03、日曜日、「木村優一 和太鼓コンサート 大地の奏で」、多度津町民会館、全席自由、前売り一般2000円、十三時三十分開場、十四時開演。
それではここで太鼓奏者の木村さんに関する簡単な紹介を。
1995年、高校在学中に起こった阪神淡路大震災の被災地激励演奏をきっかけに活動を開始。
高校卒業後はプロの演奏家を志し、時勝矢一路氏の約百八十公演のヨーロッパツアーに参加。
帰国後は、和太鼓界の最高峰、林英哲氏に師事、氏のサポートメンバーを務める。
神戸を拠点にする自前のグループでは十六年間にわたり、中心メンバー及び舞台の構成、演出を手掛け、2011年に独立。
ジャズ、ラテンなど他ジャンルとのコラボレーションユニット「スペシャルケース」を率い、和太鼓と他ジャンルとのコラボにおいて関西ではパイオニア的存在となっている。
平二十二年、兵庫県坂井時忠音楽賞、平二十四年、神戸市文化奨励賞、平二十五年、兵庫県芸術奨励賞。
そして今回のサポートメンバー、太鼓楽団大地の会について。
和太鼓奏者、木村優一がプロデュースする本格派和太鼓ユニット。
構成員は、名和誠人、阪本嵩仁、橋元恵風、山本壱輝、野中耀博の五人からなる。
十三時三十分過ぎ、会場入り。
受付にはすでに長蛇の列。
思っていたより客が入っている模様。
ロビーではCDなどと並んで太鼓のばちなんかが売られている。
何だか独特の雰囲気で面白い。
客席は七割から八割くらいの入りか。
このテの演奏会としては、入った方だと思う。
ちなみに筆者はプロの和太鼓奏者のライブは初めて。
今日はどんな音を聞かせてくれるのか楽しみ。
定刻より五分過ぎてから、演奏開始。
舞台暗転し、場内にどらの音だけが低く重く響く。
幻想的な立ち上がりから、六人一緒になっての演奏へと展開してゆく。
皆で一緒に同じリズムを叩いたり、違うリズムを重ね合わせたり、はたまたリズムの裏を取る動きを見せたりと様々に変化を付けた技の数々を披露してくれる。
しかしなんといっても印象的なのは、和太鼓特有の極めて日本的とも言えるあの縦ノリのリズムだろう。
スパッと割り切ったように響く太鼓の音。
特に六人全員の息がぴたっと合った時など凄い音が出る。
これは是非一度生で体感してもらいたい、そんな音。
演奏は初手から全開の模様。
そして演奏だけではなく、照明や演出も凝っている。
特に照明は最初は暗く青い光から始まって、やがて演奏が絶頂に達する頃合いにがらっと真っ赤に変わり、その後は緑になったりと、上手い具合に演出されていた。
また舞台上にはスモークも焚かれていて、独特の幻想的な雰囲気を醸し出すのに一役買っていた。
前半は三曲やるのだが、一曲目は木村さんはどらや鉦などと複数の太鼓が並んだ、複雑な打楽器群を巧みに操って、音楽の土台となる基本のリズムを作っていた。
二曲目は木村さんのソロのような感じでそこにサポートメンバー二人による太鼓が絡むといった内容。
ソロを取る木村さんの狂い方が凄い。
三曲目は大太鼓を使う。
この大太鼓が優れもので、叩いた後に響く余韻がまるでウッドベースの音を聞いているかのような低く渋い響き。
もちろん叩いた瞬間には、打楽器特有のソリッドな音も出ているのだが。
この大太鼓の音も是非生で体感して欲しい音の一つ。
十五分の休憩後、後半へ。
後半も三曲。
一曲目は木村さんが小さい太鼓で主旋律を取って、後ろに中太鼓五人が付く。
六人で奏でる音のハーモニーが美しい。
でも一口に太鼓と言っても、小さいのから大きいのまでその種類は無数にあるみたい。
で面白いのはどれもそれぞれに響きが違うこと。
プロをそれを巧みに聞き分けて使いこなし、独自の美しいハーモニーを創り出すのだろう。
二曲目は、ほら貝の響きから始まる。
鉦が入り、小さめの太鼓がずらりと並ぶ。
なにかガムランでも聞いているような複雑な音の響きが印象的な一曲。
他の曲とは毛色の違う楽曲で、楽しめた。
最後は大太鼓を中心に、中太鼓五人がそれを支える王道の編成。
それにしても六人の演奏がピチッと音が合った時って、まるで会場全体が震えるかのような凄い音がでるんだなと。
改めて和太鼓演奏の素晴らしさに感じ入る。
しかし見ていると、太鼓の叩き方にも色々な手法があるらしく、比較的小さい音で小刻みに連打したい時は太鼓の縁の辺りを叩いているようだし、一方、深く重い響きが欲しい時には太鼓の真ん中辺りをポーンとゆったりと叩いているようだ。
他にも、筆者が気付かないところで色々な技術が駆使されているのだろう。
同じように見えて実は微妙に異なる、そのわずかな違いを聞き分けて演奏に生かすのがプロの技術。
さらに見ていて感じたのが、太鼓を叩く姿の美しさ。
皆で音を合わせる時には、手の振り下ろし方、足の出し方まできちんと揃えられている。
これも生で体感しないと分からない見る楽しみの一つだろう。
そしてなんといっても立派なのが、あの複雑なリズムパターンを全て暗記して、一糸乱れず間違わずに演奏する凄さ。
これで2000円は安い。
それから、日本人なら誰でも魅了されるであろう、あの太鼓の腹の底にズシンと響く音。
アンコールも含めて、何とも贅沢な二時間でした。
今日は本当に来てよかった。
ありがとう。
素晴らしい演奏をしてくれた木村さんと大地の会の皆さんに感謝。
円滑な演奏会の進行を補助してくれた町民会館の皆さんに感謝。
今日も最後まで読んでくれたあなたにありがとう。