本日は紀行です。
今回と次回の二回に分けて二泊三日の九州旅行の模様をお届けします。
まずは朝四時半起き。
六時二分丸亀発の特急に乗るため。
丸亀駅では改札の際、特急を待つためのホームの足元番号を丁寧に教えてくれた。
ちょっとした気遣いだがなんともうれしい。
そうして乗り込んだ特急だが相変わらず乗り心地がいい。
不快な揺れがほとんどないのだ。
天気は曇り。
新幹線は九州新幹線のみずほ。
ゆったりとした四列シートとシックな色合いの美しいインテリアが印象的な列車。
なんとこの新幹線の乗継の際、特急の到着が五分遅れになり、元々八分での乗り継ぎだったのでバタバタの乗継となった。
しかし遅れていた特急側から連絡が行っていたのであろう。
新幹線は三分ほど定刻を過ぎて待ってくれていたようだ。
何はともあれ無事乗り込めてぎりぎりセーフ。
すかさずホットコーヒーを注文。
持ってきたお菓子と合わせる。
このいかにもな旅行感。
これも旅の楽しみの一つ。
新幹線は時速300㌔の世界なのに乗り心地はとてもいい。
車窓に目をやれば、中国地方の山間に水気をたっぷり含んだうっすらとした霧がかかっていて、まるで水墨画を見ているような美しい風景が楽しめる。
バスで天神まで出て、今日の目的地である柳川まで西鉄の特急で向かう。
なお、この電車は特急料金はいらない。
博多天神から柳川までは四十八分で着く。
柳川はうなぎが有名らしく、インターネットで調べていた地元の老舗、元祖本吉屋へと早速向かう。
十時三十分開店だそうで、昼時になると一時間待ちはざらだとか。
ので、開店早々の入店を目指して来たわけ。
感謝、感謝。
ここはなんと創業が1681年とか。
すごいね、店が出来てから三百ウン十年。
ほとんど関ヶ原の時代から。
柳川のうなぎはせいろ蒸しが本道なのだそうでそれを頼むことに。
3500円。
店の外観は相当年季の入った感じだが、中は適度に新しい。
清潔でかつ独特の落ち着きと明るさがある。
熱い美味しいお茶をのみながらゆったりとした時間を楽しんだ後、運ばれてきたお膳。
朱塗りの重箱に入ったせいろ蒸し。
柳川のせいろ蒸しの特徴は、ご飯にたれがあらかじめからまっていて味付きのご飯になっていること。
そこに焼いたうなぎを載せて改めて蒸して仕上げるという。
だからご飯はアツアツなのである。
まずは一口。
旨い。
うなぎのたれは濃過ぎず薄すぎず。
そして肝心のうなぎは適度に脂が乗っていてくせがない。
付け合せの吸い物はキーンと張った透明な出汁が印象的な料亭風の薄味。
とにかくこのテのうなぎ専門店に入ったのは初めての筆者。
その感想は、とりあえず美味。
だけど、普段食べているスーパーで買ったうなぎとびっくりするくらいの味の違いがあるかと問われれば、正直それほどの差はないとも感じた。
あと、最後に蒸す関係もあるのか、たれ付きのご飯も若干硬くて、独特の濃厚な味が染みついている感もあまり出ていなかったように感ずる。
以前新聞で読んだことがあるのだが、うなぎは高くても安くてもそれほど味にハズレはないと書いてあったが、まあそういうものなのだろう。
もちろん、癖のない滑らかさとか皮の部分のぷりぷり感とか、いわゆる微差はあるのだが。
まあそんなことはともかく、豊かな時間を過ごせた最高の昼食でした。
食後は柳川名物の舟下りを楽しむ。
最初はうなぎ屋さんから近い三柱神社にある乗場から乗ろうとしたが、そこにいた舟下りの社員のおじさんが今日はここは一杯なのでよそに行った方がいいということで、案内してもらった、そこから歩いて二、三分の所にある柳川水郷観光というところの舟に乗ることに。
1500円。
なんと昔、金毘羅さんでこのおじさんが神馬に触ったところ、それまで恵まれていなかった子宝に恵まれたのだそう。
金毘羅さんと言えば、歌にもある通り日本一の大神さまと言うが。
その御利益はやはり凄いのだと改めて実感。
そしてこの親切なおじさんとの不思議な御縁にも改めて感謝。
不思議な巡り合わせもあるもんだなあ。
料金はどこも同じみたいだ。
どんこ舟という、柳川特有の底の平らな舟に乗って約一時間。
船頭さんは竹竿一つで舟を自在に操る。
舟の横幅一杯の狭い橋の下の通路をくぐったり、橋の下でエコーがかかるのを利用して歌を歌ってみせたりと、見せ場はたくさんある。
この柳川のどんこ舟、乗り降りする時は不安定で船体がかなり揺れるが、一旦乗り込んで船体が安定すると後はほとんど揺れない。
底が平らというのがミソだそうだ。
昔の人の知恵と技術と言うのはやはり凄いものだ。
時折響く、船頭さんの九州訛りが耳に心地いい。
おかげで一時間はあっという間。
途中、航路の中程には舟に乗ったまま横付けできる売店があってそこでは水やお酒、アイスやかき氷などが注文できる。
水辺の涼しい風に吹かれながら、舟の低い視点から眺める柳川の景色は最高。
ゆったりとした時間が流れる。
御花では自慢の庭を二階から眺めることができるそうだが、あいにく今日は結婚式が一組入っているということで、すぐに見ることはできなかった。
が、浴衣を来た可愛らしい女の子の職員が親切で、もう少し待つと結婚式が終わるので、再入場しても構わないから、それまでお土産なんかを見て回っていたらと言ってくれた。
その後は北原白秋記念館へ。
白秋記念館では生家である昔の商家の造りをそのまま残した座敷に上がり込んで皆で一服した。
しかし昔の家というのはよく出来たもので、エアコンなどないのだが、縁側に座っていると非常に涼しくて◎なのである。
その後は柳川の古い町並みを散策しながら、元来た道へと。
柳川は古い町並みの残る美しい街。
ちょっと倉敷を思い起こさせる風情もある。
また、柳川はここを出身とする有名人も非常に多い。
そんなこんなで柳川を後にして再び西鉄特急で博多に戻る。
天神に着くと、今宵の宿へと。
カンデオホテル博多天神。
西鉄天神駅から歩いて十分ほど。
新しくてきれいなホテルだ。
インテリアのセンスもいい。
全体的にシックな色合いで。
部屋に入ると明るい白と白木が基調となったきれいな部屋に目を奪われる。
普通、この価格帯のホテル(9000円)でこういうサービスをしているところは少ない。
筆者はホテルのあのトイレと一緒になった狭いバスタブがなんとなく苦手だったのでこれは嬉しいサービスだった。
また部屋のベッドの高さも低めで、座りやすく寝やすいのがとてもよかった。
行くとなんと今日が移転のための閉店の日で、替え玉が無制限で無料となっていた。
なんというめぐり合わせ。
お蔭で表には行列が。
三、四十分待ったか。
ようやく順番が巡ってきた。
筆者が注文したのはラーメン赤。
まあ、なんか変わった独特の味でしたな。
筆者はあまりお腹が空いてなかったので、一回、替え玉しただけ。
しかしこの替え玉で出てきた麺は若干固めだった。
が、これがよかった。
こってりとした豚骨のスープとよく合うのである。
博多で固めの面が好まれる理由がなんとなく分かった気がした。
ホテルに帰ってきて、早速大浴場に入る。
これが素晴らしかった。
十階のビルの屋上に設置されているのだが、吹き抜けの露天風呂がある。
その露天風呂に入っていると、夏の夜の独特のぬるい風がビルの隙間を縫って駆け上がってくるのが分かる。
そしてまだ若干の青さの残る夜空にはうっすらと雲が。
夏の夜にぴったりのちょっとぬるめのお湯が長く浸かっているには心地いい。
食に恵まれ、宿に恵まれ、人に恵まれた最高の一日でした。
安全運行に務めてくれた鉄道関係者の皆さんに感謝。
美味しいうなぎとお店に感謝。
柳川の川下りと街の皆さんに感謝。
最高の宿に感謝。
おいしかったラーメンと店の皆さんに感謝。
今日も最後まで読んでくれたあなたにありがとう。
来週の続編をお楽しみに。
それではまた。