本日は落語会の模様を。
九時三十九分発の快速サンポート号。
十時二十一分高松着。
天気は薄曇りで時々晴れ。
春らしいうららかな陽気が楽しめる一日か。
さて少し早めに高松に乗り込んだところで、サンポート近辺をうろちょろしながら趣味の写真撮影で時間を潰す。
ちょうどお腹も減ってきたところで、JRホテルクレメント高松に戻って昼食を。
ホテルクレメント高松一階にあるレストラン「ヴァン」で。
食べ放題、税込、1800円。
昼食は十一時半からの営業。
ついでなのでグラスワインを一杯頂いた。
列車でくるとこれが出来るのが有難い。
まあ一応、今週一週間、頑張った自分にご褒美的な。
とは言うものの、普段は大した働きもしてないグータラ社員なんですけどね。
ただ飲みたいだけ、と言ってしまえばそれまで。
あはは。
という訳で、最初は野菜からスタート。
バーニャカウダの生野菜がびっくりするくらいに美味しい。
野菜本来の甘さが随所に出ていて、まるで果物を食べているかのような。
素材がいいのだろう。
続いて、前菜っぽい料理を見繕って一皿を形成。
こうしてじわじわと本丸目指して攻めていく感じが筆者にとっての食べ放題の魅力の一つなのだ。
自分だけの一皿が作れるこの楽しみ。
従業員の数も多めで、サービスもいい。
お料理はどれも全般的に味がよく、いい意味で安定感がある。
そしてメインの一皿へと移っていく。
今回、特に印象に残った一品は、「もち巾着と大根のうま煮」。
洋風料理がメインの中で、一際異彩を放っていたのがこれ。
和のお料理だ。
特に大根が軟らかくて甘くて絶品だった。
このテの食べ放題で出てくる果物にしては甘みがしっかりと行き届いた実に美味しい果物だった。
こういうところもおさおさ抜かりがないようである。
お見事。
さて、食後はホテルを出て、しばらく高松三越や商店街などをぶらぶら。
三越では、とても質の良い夏用のジャケットに遭遇したが、値段が値段なので即決はせずに今後の検討の材料とすることに。
十四時半過ぎ、今回の落語会の会場である県民ホールへ。
「桂米朝一門会」、香川県県民ホール小ホール、2016.4.23、土曜日、全席前売り指定3500円、十四時半開場、十五時開演。
朝日新聞社主催。
去年もそうだったけど、地元の新聞販売店に券を頼むと、わざわざ家までチケットを持ってきてくれた。
その親切に感謝、感謝。
今回の落語会には、米朝一門の噺家さん六人が登場する。
今日はどんな噺を聞かせてくれるのだろう。
しかし、こういう落語会というのは実にいいものだと改めて思う。
地方に居ながらにして、本格的な寄席の雰囲気が味わえるのだから。
そして、何よりこっちは座り心地の良い椅子にどっかりと腰を落ち着けてさえいれば、後は向こうが勝手に笑わせてくれるというのだから、こんないいことはないのである。
会場は小ホールといってもかなり大きく、600、700人は入れそうな感じである。
客席はもちろん大入り満員。
開演五分前。
寄席囃子の粋な調べが会場に響く。
三時丁度に開演。
トップバッターは桂そうばさん。
ざこばさんのお弟子さんだそう。
噺は、こだわりの趣味人が建てた新築の家を褒めに行って、おだてて小遣いをせびろうという間抜けな男の魂胆を面白おかしく描いた噺。
この男、褒めるのはいいが何せ根がお間抜けなので、褒めている内につい頓珍漢なことになってしまう。
この噺は筆者も何度か聞いたことがある。
一度聞いた噺をもう一度聞くのも乙なもの。
それぞれの演者によって噺の表現が違っているのが分かって面白い。
今回のそうばさんの噺では、途中苦悶の叫び声での心理描写があったりして、そこら辺りにそうばさんならではの工夫の跡が見られて興味深かった。
二番目は桂佐ん吉さん。
昨年NHKの落語家新人賞を取られたそうだ。
おめでとうございます。
噺は、さる夫婦がささいなことで夫婦喧嘩をしたところから始まる。
それを諌めたご近所の旦さんが、今後夫婦喧嘩をしそうになったら、互いの言い分、腹にたまった言い分を吐き出せる袋を作りなさいと言って、堪忍袋の作り方を夫婦に教える。
そしてその通りに堪忍袋を作った夫婦なのだが。
この噺を佐ん吉さんは声の張り、メリハリもはっきりと付けて動作も大きく見栄えのする高座を作り上げていた。
さすがNHK新人賞をとっただけのことはある。
時折、堪忍袋に本音を吐き出すところで、自身の売れない落語家の自虐ネタなんかも織り込まれたりしていて面白かった。
続いて、桂吉弥さん。
噺は、ふぐを食べるのを怖がっているさる御亭主が、間抜けな主人公を家に呼んで接待して、なんとかふぐの毒見をさせようとする噺。
でもその男もふぐには尻込みして、結局は誰も最初に食べる人がいなくなり。
そこにたまたま乞食の男が現れて。
この噺を、枕の部分での知識の披露、噺の本筋での間の取り方の絶妙さなど、総合力が光る高座を練り上げていた吉弥さん。
また枕の部分では、本筋には関係ない話題だが、現上方落語協会の会長の桂文枝さんのスキャンダルの話も出たりして。
色んな意味で中堅どころの手堅い面白さが光っていた。
前半最後は、桂南光さん。
買い物上手な男が、瀬戸物の水瓶を人に頼まれて一緒に買いに行く噺。
この買い物上手の男の買い物の手練手管が半端ではない。
浪花の商人をも巧みに陥れる驚愕の買い物の手口に唖然とする。
そしてそのバカバカしさに大笑いして。
しかし南光さん、やっぱり上手いなあ。
力の抜け具合が抜群で噺に独特の軽みがある。
だから噺の内容がすっと耳に入ってくるのである。
一体、他の演者と具体的に何が違うのか、素人である筆者には分からないけれど、これが落語家としての経験の差、格の違いというものなのであろうか。
十分の中入り後、後半。
後半は二席。
まずは桂米團治さんから。
大阪の裕福な商家の若旦那。
遊び癖がいつまでたっても抜けきらない、穀潰し。
いわゆる和事の歌舞伎でいうところの「やつし」の噺だ。
真面目で実直、一代で財を成した父親との会話に浪花の人情が滲む。
かと思っていたら、後半では思わぬどんでん返しが。
米團治さんは、自身も米朝さんのお子さんでぼんぼん育ちだそうなので、こういう噺は本当に上手いように思う。
また、浪花の花街、宗右衛門町の描写では鳴り物も入って、上方の粋が感じられる。
枕の部分では若かりし頃の米團治さんのぼんぼん振りの話も飛び出して、大変面白かった。
遊び上手で華やかな粋が感じられる高座だった。
最後は、桂ざこばさん。
恋の病に苦しむ男の噺。
だけどその恋、よくよく話を聞いてみると全て夢の中でのできことだとか。
おいおいおい、と言ったところである。
最初、人情噺かと思って聞いていたら、そうでもないような。
しかし、最後にはやっばりしんみりとした人情がにじみ出てくるそんな噺。
枕はほとんどなく、噺の本筋だけで長丁場を聞かせる。
ざこばさんらしい味が随所に出ているいい高座だった。
大トリにふさわしい熱演。
さて楽しかった一日もそろそろ終わりに近づいているようだ。
とにかく、色んな情緒を堪能させてもらった二時間半でした。
最高の一日をありがとう。
安全運行に務めてくれた鉄道関係者の皆さんに感謝。
最高の昼食を提供してくれたホテルクレメントの皆さんに感謝。
贅沢なひとときを演出してくれた米朝一門の皆さん、並びに会場関係者の皆さんに感謝。
チケットを配達してくれて販売店の人に感謝。
今日も最後まで読んでくれたあなたにありがとう。