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夏井いつき 句会ライプ

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2016.3.31 木曜日、「夏井いつき 句会ライブ」、三豊市文化会館マリンウェーブ大ホール、全席自由前売、1800円、十八時半開場、十九時開演。
最近、TBS系列のテレビ番組「プレバト」、芸能人査定ランキングの俳句コーナー担当の辛口講師として全国区の人気を博しつつある夏井いつき先生。
その先生の句会ライブが地元香川で見られると聞いて一路駆け付けた次第。

それではここで夏井いつき先生の紹介を。
昭和三十二年生まれ、松山市在住。
八年間の中学国語教諭の後、俳人へ転身。
「第八回俳壇賞」受賞。
俳句集団「いつき組」組長として創作、指導に加え、俳句の授業「句会ライブ」、全国高等学校俳句選手権「俳句甲子園」の創設、「俳都松山宣言」起草にも携わるなど幅広く活動中。
平成二十七年五月、初代「俳都松山大使」に就任。

六時半過ぎ会場に到着。
中に入るともうほぼ席は埋まりつつあるところ。
ざっと見渡したところ、客席は八割か九割方の入り。
さすがだねえ、今をときめく人気者。

七時開演。
壇上に先生のおでまし。
今回は後ろの方の席に座ったので、顔こそよく見えなかったのだが、声や姿形はテレビで見る通り、まぎれもない夏井先生そのもの。

冒頭、先生は以前にも詫間町に来たことがあるという話を。
何でも三代目の浦島太郎役の人に会ったことがあるとか。
そこから始まり、話は段々と本題に入って行く。

曰く、俳句を作ると認知症予防にいいという話。
これは医学的にもれっきとした結果が出ているそうで、何でも俳句歴の長い短いに関わらず、俳句を作ると脳の活性化が顕著にみられるという。
ベテランだから、脳の活動がより活発になるかと言えばそうではないらしく、全く俳句の経験のない素人でもベテランと同じくらいに脳が活性化するらしい。

また脳トレとして最近人気の計算ドリルなどと比べるとドリルの方は脳の計算を司る部分だけが活性化するのに比べて、俳句だと前頭野の全体が活性化されるという。
俳句を作ると言葉とイメージを頭の中で練り上げるため、様々な記憶や経験を基に、熱い冷たいから始まって、匂い手触り音感、味覚など五感を最大限に働かせることができるのがいいらしい。

そしてそうやって一日一句ずつ作れば、振り返ると日記代わりにもなるというし、それが長年溜まればひいては自分史にもなりまた家族史にもなるという。
実際、過去に夏井先生の句会ライブを訪れた人で、死んだお父さんが娘のために詠んだ句が大量に出てきてそれを読んだ娘さんや子供さん達が、死んだ後にこうやって大切な記憶が伝言されるってなんて素敵なことなんだろうと思って、自分達でもこうやって俳句が詠めたらいいなと思って、喪服姿のまま、夏井先生の句会ライブに駆け付けてきた人がいたらしい。
まさに俳句が、自分史・家族史となって死後も永遠に生き続けた証がここにあるというわけである。

さて、テレビで活躍する以前から、こうやって句会ライブなどを通した俳句の啓蒙活動をコツコツ続けてこられたという夏井先生。
しかし、改めてテレビ番組、特にバラエティーの力に驚いたという。
ライブ中心の活動で地道に練り上げてきた活動ではどうしても爆発的な広がりというのは期待できない訳だが、テレビに出るとあっという間に名が売れ、顔が売れる。
名や顔が売れると嬉しい半面、鬱陶しい部分もあるのだろうが、しかしそれを面倒くさがらずに逆手にとって、普段俳句に縁のない一般人に対する俳句啓蒙の最大の機会と捉え、活動に邁進しておられるというから立派である。

そして後半、実作に移る。
俳句作りのコツを教えてもらえるそうだが、話の内容は会場に集まった人達の俳句の習熟度を見て決めるという。
今回は調べてみると初心者が圧倒的に多かったので、一番簡単な俳句の作り方を教えてもらえることに。

俳句と言えば、まず思い浮かぶのが季語だが、これは大体五文字くらいを使うのがほとんどだという。
と言うことは、俳句は全部で十七音から成る芸術だから、残り十二文字でその人の個性を出すことになるらしい。
と言っても、何も難しい話ではなく、残り十二音を決める俳句の種は日常のおしゃべりの中にいくらでも転がっているそう。

実際、俳句初心者という人が客席から選ばれて、先生から、今一番盛り上がっていたおしゃべりの話題はと聞かれてそれを素直に答えたら、その言葉をそのまま先生が七音と五音の韻律に塗り替える、それだけで、後はそこに五音の季語を加えたら、もう俳句が完成した。
びっくりするほど簡単に一句ができてしまうことに改めて驚き。

このブログでも開陳している通り、筆者も下手くそながら俳句を詠んだりしているのだが、独学で始めた筆者の俳句の場合、気が付くと季語を二つ以上付けていたり、また季語がなかったりと滅茶苦茶なのだが、この作り方だとそういう心配もない。
まず季語を外してから、残りの十二音を決め、それに合う季語を探す。
或いは逆に五音の季語に合う、残りの十二音を探す。
なるほど、俳句ってこうやって作るのかと目から鱗。

で、その教えを基に会場全員が一句作ることに。
先生からお題が出されて、あらかじめ配られてあった紙に書いて提出する。
この日のお題は「三」。
この「三」が入った言葉を何でもいいから一つ、句の中に入れることが条件。
三豊、三輪車、三角、三軒、三杯、などなど、探せばいくらでもある。
で、季語も親切に別刷りの紙に幾つも列記してくれてあるので、その中から気に入った季語を選んで、五分で一句完成させることに。

もちろん筆者も一句読んで提出した。
この日、会場には五百人を超える観衆が集まっていたそうだが、その全てから出された句を先生と先生の旦那さん、息子さんの三人で選句して行く。
これがなかなか凄くて、あっと言う間に選んでゆくのだが、それにも関わらず選句の腕はたしか。
後で選ばれた句を聞いていると納得の選句なのであった。
ものの十分か十五分の出来事。
すごいなあ。

そこから選ばれた句の解説に移る。
入選というのではないが、印象に残る面白く個性的な句がいくつか紹介された後、今回のメイン、選ばれた秀句七作品が発表される。
その中から、会場の拍手が一番多かった作品がこの日の最優秀作品というわけ。
それを決める前に、作品の批評。
先生の解釈や客席の解釈、また作った人自身の解釈など、一致する部分もあれば違っている部分もあるのが面白い。
違う想いで詠まれた句が、読む人によって違う解釈で受け止められる。
そんなところも含めて俳句の面白さが感じ取れる仕掛けとなっている。

選ばれた七作品はどれも傑作揃い。
さすがだな。
その中でも今回、ダントツで客席の拍手をかっさらった一位の句を紹介しておくとする。
「三輪車 とどかぬ足の つくしんぼ」
なんとなく微笑ましい幼児の姿が目に浮かぶよう。
三輪車から出した足が下まで届かず、宙ぶらりんになっている、独特の余情。
まあ、なんとも一位にふさわしい句。

さて、一位の句も無事決まったところで、そろそろ会もお開き。
先生はテレビでは辛口という点が評判になっている人だが、実際目の前にしてみると、細かい気遣いをされる情の深い人という印象だった。
繊細な感覚をお持ちでそれが結果としてテレビでの毒舌に繋がっているのだと思った。
毒舌は鋭さ、繊細さの裏返しなのだろう。
でも実際の先生は情の人とお見受けしました。
あっという間の楽しい二時間でした。


最高の句会を体験させてくれた夏井先生とそのご家族の皆さんにありがとう。
句会の進行を滞りなく演出してくれた会場関係者の皆さんにありがとう。
今日も最後まで読んでくれたあなたにありがとう。

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