本日はコンサート評です。
2018.9.8 土曜日、「山田姉妹コンサート」、香川県民ホール小ホール、全席自由前売り2500円、十三時半開場、十四時開演。
それでは山田姉妹について簡単な紹介を。
姉妹は二卵性の双子で、1991.12.24 神奈川生まれ。
姉の華は東京芸大卒、妹の麗は国立音大声楽科オペラソリストコースを首席卒業。
筆者がこの二人の存在を知ったのはBSで放送されているコーラス番組「日本名曲アルバム」でのこと。
主に昭和歌謡を中心に全編合唱で構成されているこの番組。
改めてクラシックベースの合唱の素晴らしさを堪能させてくれる。
父がこの番組をよく見ていてそれで一緒に見るようになったのだが、見ていると人間の生の声の美しさ、そしてそれが重なっていくことの美しさに魅了され、合唱って本当にいいもんだなと思わせてくれるのである。
この姉妹もその番組で合唱隊の中に入って合唱をやっていたそうだが、そこから独立して二人だけでも歌うようになったようだ。
もちろん、今でも合唱はやっているが。
定刻通り十四時からコンサートは始まる。
一曲目は名曲「翼をください」。
最初の登場は舞台からではなく、客席入り口から。
二人が左右の入り口から分かれて出てくる。
冒頭から美しいハーモニー。
双子のせいか、声量、声質ともにどちらかが強すぎるとか偏っているとかがあまりないのでとにかくハーモニーが美しい。
また二人ともきれいなソプラノである。
そして声が若くて容姿が端麗。
だから聞いていると自然になんとなく清々しい気持ちになってくる。
二曲目はさだまさしさんの名曲「雨やどり」。
結婚するまでの男女二人の奇妙な縁が、物語仕立てで歌われる。
歌詞もいいし、メロディーもいい。
歌唱もよかったな、乙女心みたいなのがよく出ていて。
これを聞くと必ず思い出すのが以下のギャグ。
「君の髪が肩から伸びて」、ワァオゥ。
あはは。
でもこれは名曲中の名曲だ。
姉妹が歌うと爽やかな青春の匂いが立ち込める。
四曲目は「見上げてごらん夜の星を」。
この曲、筆者はずっと永六輔さんと中村八大さんのいわゆる六八コンビの歌だと思っていたのだが、調べてみると作曲は中村八大さんではなく、いずみたくさんになっていた。
曲の方は二人のハーモニーがばっちりと来ていて圧巻。
五曲目「二人で一つ」は手話付きで歌う。
ポップス曲最後の六曲目は「あなた」、小坂明子。
きれいなメロディの名曲。
筆者もこの曲が大好きで密かにカラオケで歌えることを目指して歌詞やメロディを覚えていこうとしているところなのだが。
しかし若い女性の結婚に対する甘いロマンがたっぷり詰まったこの曲を一人カラオケで歌う四十六才のおっさんの姿って傍目にはどう映るんだろう。
そんなことはともかく、歌の方は素晴らしくて特に最後の部分の二人のハーモニーには魂が震えた。
「赤とんぼ」。
三木露風さんの詞がいい。
「山のお寺の桑の実を小篭に摘んだはまぼろしか」
「ねえやは十五で嫁に行き、お里の便りも絶え果てた」
なんだか聞いているだけで切なく涙が出そうになってくる。
最後は「ふるさと」。
これも歌詞がいいんだな。
「志を果たしていつか帰らん」
「いかにいます父母、つつがなきや友がき」
「山は青きふるさと 水は清きふるさと」
これら日本の歌はマイクを使わずに生歌でやっていた。
前半はここまで。
十五分の休憩後、後半へ。
主にオペラアリアを歌う。
さすが二人とも音大卒とあってこちらは本職の芸。
衣装も変えて、裾を引きずるようなドレス姿で登場する。
もちろんここからはマイクなしの生歌。
歌劇「ジャンニ・スキッキ」より私のお父さん、プッチーニ。
よく歌われるアリア。
恋人との婚約を父に反対されてポンテ・ヴェッキオから飛び降りるわよと迫る歌。
二人で歌うとより迫力が増す。
続いて二人が一曲ずつソロで歌う。
一曲目は歌劇「ミニョン」より私はティターニア、トマ。
これは姉の華さんが。
さすがにソロとあって自分が一番自信のある曲を選んでいるのだろう。
声がよく出ていて聞きごたえ十分。
これは妹の麗さんが。
ぜんまい仕掛けのロボットが歌を歌うという設定でとにかくコミカルな動きで笑わせてくれる。
が、歌の方は本格的。
ところでこうして聞き比べると分かるのだが、お姉さんより妹さんの方が声が若干強いようである。
音域もかなり広いよう。
が、声の可憐さ、美しさはお姉さんの方か。
「猫の二重奏」、ロッシーニ。
この曲も面白かったなあ。
とにかく猫の鳴き声だけで曲が構成されているのである。
だからピアニストもソリストもみんな猫に扮して。
最後には二人の猫がお土産の讃岐うどんを取りあうという演出も。
歌劇「魔笛」より復讐の炎は地獄のように我が心に燃え、モーツアルト。
これも有名な曲。
曲中程にあるコロラトゥーラの場面がとにかく聞かせどころ。
そのコロラトゥーラは妹さんが主にやるのだが、まあよく回ります声が。
さらに二人でそれをやると迫力は二倍三倍。
聞きごたえありました。
最後は「きらきら星変奏曲」。
これはあらかじめ配られたプログラムには載ってなかった曲だが、今回のために特別に入れてくれた曲だそう。
美しいハーモニーが冴えわたる。
アンコールは二曲。
トルコ行進曲ともう一曲、メロディーは知っているのだが題が分からなかったジャズの曲。
とにかく楽しくて、最高のステージ。
終盤に行くにつれ、声の出もますますよくなり凄みが増して行く。
だけど全体的にはとてもきれいな印象。
バックの演奏はピアノ一本。
ピアノは上手く弾けば、それ一台でオーケストラの代わりができると言われるが、その重要な役どころを存分に果たした的確な演奏だったと思う。
盛り上げ方も心得たもので、黒子役をきっちりと果たした。
とくに後半は、一般的にはあまりなじみのないクラシックの曲を楽しんでもらおうとユニークでユーモアあふれる演出が施されてあり楽しめた。
歌の魅力を堪能できた二時間。
また香川に来てくれることがあったらやっぱりもう一度見てみたい。
そんなコンサートでした。
最高の音楽を聞かせてくれた山田姉妹、並びにピアニストの三人とその関係者さんにありがとう。
そのコンサートをつつがなく支えてくれた県民ホールの関係者の皆さんに感謝。
そして今日も最後まで読んでくれたあなたにありがとう。