先週に引き続き紀行の第二弾です。
その昔、薩摩の殿様、島津家の別邸として作られた庭園だそう。
しかしまあ広いところです。
山の麓にあって広大な庭が辺り一面に広がる。
で、彼方には桜島が見える。
庭園の中には御殿もあって、中に入ると昔の日本建築のよさがしみじしみと感じられる。
人間の身体の標準的な大きさ、いわゆるヒューマンスケールを大事にしつつしかもその範囲の中でぎりぎりの大きさと広さを無理なく確保しているという感じ。
昔の建築というのはどれもこういう感じだったのだろう。
隅々までよく考えられ練られていることがよく分かる。
だから中に入ると何だかほっとするのである。
御殿の中には途中、縁側があって腰かけると風がよく通ってとても涼しかった。
外気温三十五度越えの日だったがそれでも縁側は涼しい。
広い縁側に深い軒下は夏の日差しを上手に遮ってくれる。
それで要所要所にレストランやショップが配置されて飽きないように作られている。
店はどこも新しくて小ざっぱりとしていて趣味がいい。
そんな仙巌園内の喫茶で昼食を頂くことにした。
仙巌茶寮。
鶏飯ランチ、1300円。
店の人の説明によるとこの鶏飯、奄美地方の郷土料理だとか。
なんでもその昔、奄美の地に薩摩からお役人がやってきた時、鶏を丸ごと捌いてもてなしたのが始まりだそう。
具材を丼にぶちまけて冷たい出汁をかける。
まずは一口。
出汁の味がいい。
とてもおいしい。
何だか上手く説明できないけどとにかく美味。
付け合せのフルーツとあわせてとても豊かな昼食だった。
その後、再びタクシーで鹿児島中央駅まで帰って、そこからはレンタカーで移動。
鹿児島市内を離れて指宿まで行く。
今回はオリックスレンタカーを借りた。
父親によるとオリックスレンタカーの値段が他と比べて飛びぬけて安かったそうだ。
トヨタヴィッツのハイブリッド1500cc。
カーナビとバックビューモニターが付いている。
それにのってしばしのドライブ。
まずは指宿の西郷どん館へ。
NHKの大河ドラマ「西郷どん」の撮影衣装や出演者のサインなどが並ぶ一階。
本格的な薩摩藩の歴史解説や西郷さんに関する展示の二階。
古来、薩摩藩は琉球などとの貿易拠点であった山川港を押さえることで鎖国時代においても西欧との貿易を一手に担うことで海洋王国として栄えたのだという。
それから維新、薩英戦争、大政奉還の大変革を経てあの悲劇の西南戦争へと展示は進む。
新しい時代にどうしてもなじめない不平士族と共に時代の波にのまれて散って行った西郷さん。
腹にどんな思いを抱えていたのだろうか。
案外純粋であっけらかんとしていたのかもしれぬ。
やはり凄い人である。
そんな偉人西郷さんの人生の基礎を築いたとも言える二度の島流しについても展示はていねいに説明してくれている。
古来、監獄に入らずに偉くなった奴はいないというが。
指宿の山の上にある。
車で行くと細くくねった山道を延々と上がっていく感じ。
十五分くらいそんな山道を走ると頂上付近にホテルは見えてくる。
大きなホテルだ。
館内はかなり広い。
サービスもいい。
玄関を入るとすぐに荷物を取りにきてくれるし、道中すれ違う従業員は皆気持ちのいい挨拶をしてくれる。
広い。
そして窓からは指宿の海が眼下に見える。
はるか向こうに桜島。
絶景の宿。
さすが山の上に建てられたホテルだけのことはある。
インテリアは茶を基調に随所に和風建築の要素を取り入れた落ち着いた造り。
こりゃ大当たりだな。
至福のひととき。
土産物屋を見た後、大浴場へ。
露天風呂もある。
桜島もしっかり見える。
緑豊かな山と陸と海と青い空、絶景かな。
湯は天然温泉、源泉かけ流しだそう。
なめらかで柔らかなアタリの湯で極めて保温力が高いのが特徴という。
こりゃ明日くらいに死ぬな、ばちが当たって。
あはは。
夕食はバイキング。
館内は浴衣にスリッパでの移動もOKという(食事も)。
やはり旅館というのはそうでなければ。
日本人にはこのゆるさが嬉しい。
バイキングには飲み放題も付いている。
アルコール、ソフトドリンクどちらも飲み放題。
お、なかなか話が分かるじゃねえか。
種類も豊富。
その場で作ってくれるライブキッチンもあって楽しませてくれる。
明けて翌日、最終日。
八月十四日、火曜日。
朝食もバイキング。
が、昨夜とは違うレストランで頂く。
昨晩もそうだったが、ここのバイキングは味がいい。
色んな種類の料理を和洋中ジャンルを問わず作らなければならないバイキングは料理の基礎や総合力が問われる分野なのだと思うのだが。
しかしその高いハードルを見事にクリアしているのがここの料理といえるだろう。
その後、ホテルをチェックアウトして、指宿を離れ知覧へと向かう。
途中池田湖と開聞岳の見える場所に上手く立ち寄ることができて家族で写真を撮った。
あれも絶景だったなあ。
どっちも絶景。
海も空も青の色が濃い。
そして道端に目をやると南国らしい植生も見えたりして。
知覧ではまず武家屋敷群を見学。
ここの武家屋敷は庭園見学が中心で中の建物には入れないようになっている。
中には外からだけだけど建物の内部を公開しているものもある。
しかしその場合でも中には入れないようになっている。
歩いて回るとちょうど一時間くらいのコースとなっている。
特徴は石垣。
台風の多いところだろうからか。
よく見ると石垣の積み方や石の種類も様々。
詳しい人にはたまらないだろう。
あと金沢でもそうだったが、水がきれいで豊富。
やっばりいい場所を選んで住んでいたのが分かる。
どの庭園も基本的な造りは同じだが、表現の幅はそれぞれが個性を発揮しており、見応えがある。
展示は全七軒で500円。
その後は知覧の特攻会館へと向かう。
まず入ってゆく時からすでに泣きそうになってくる。
こうして何だかペラペラと調子よく書き散らしていることが恥ずかしくなってくる。
ただひたすらに勇ましい者、忠義に秀でた人、生真面目で繊細な人、色んな人がいる。
共通点は皆、死んだ人ということ。
それも自ら志願して。
特攻会館というと、政治的には右のプロパガンダ施設ではないかといぶかしむ人もあるかもしれない。
しかしここにきて展示を見てもらうと分かると思うのだが、単純な戦争賛美の色はここには全くない。
右とか左とかそんなこまごました分類を超えてここには魂の根源に迫ってくる時代の要請で「明るく」死んでいった者の魂の叫びがある。
その声に私達は虚心に向き合う必要があるのだろう。
でも死んでいった人達というのはみんな強かったんだな。
当時もいたであろう、弱くてずるい人達はこの修羅場、この狂気をどう凌いだのだろう。
そんなことがふと頭の中をよぎる。
そして一方では、死んで日本の礎となったこの人達を前に、今の私達はそれに十分こたえられるだけの社会を構築してきただろうかと改めて思う。
しかし、特攻で死んだ人というのはほとんどが二十歳未満の人達である。
その事実に改めて唖然とする。
ここで食べた蕎麦が美味しかった。
こんなに美味しい蕎麦は初めてというくらい。
コシがあって喉ごしがよくて。
値段も安かったし。
680円くらいだったか
そしてデザートに鹿児島名物、かき氷のしろくまを。
練乳の甘みとフルーツの酸味がミックスして得も言われぬ旨さ。
地元の人に愛されている理由がわかった。
鹿児島中央駅から新幹線で帰途に着く。
ああ、でも楽しくてためにもなる、充実した三日間でした。
美しい庭園の仙巌園さん、並びに関係者の皆さんに感謝。
美味しい昼食の鶏飯、仙巌園茶寮さんに感謝。
最高の車を安く貸してくれたオリックスレンタカーの皆さんに感謝。
至福の一夜を演出してくれたホテル指宿ベイヒルズの皆さんに感謝。
そのホテルの夜と朝のお料理、バイキングスタッフの皆さんに感謝。
知覧の武家屋敷並びに関係者の皆さんに感謝。
同じく知覧の特攻会館の皆さんに感謝。
その他、福岡博多並びに鹿児島、指宿、知覧、お世話になった皆々様に改めて感謝。
今日も最後まで読んでくれたあなたにありがとう。
二回にわたる連載、これで終了です。
二回とも読んでくれた方、本当にありがとう。