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Channel: 文芸 多度津 弘濱書院
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昼飯と展覧会

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本日は写真展観覧の報告に昼御飯のグルメ情報を絡めてお届けします。

イメージ 12018.2.4 日曜日。
この日も寒い日。
当日は朝から雪花が舞っていた。
しかも、この日は、くしくも丸亀ハーフマラソンの日。
そして立春でもあった。
今年の立春は、数年に一度と言われる大寒波に見舞われた非常に寒い立春である。

まずは昼御飯から。
丸亀平山町にある和食の店「遊食房屋」がその店。

イメージ 2ここは以前、店が開店したばかりの時に母を連れてきたことがある。
が、その時は入店した時間が遅かったため、自慢の和食のランチメニューを頼むことができなかった。
いわゆる和食の「御膳」ものは八十食限定なのである。

だが、今回はその反省を生かして早目に来た。
よっしゃ、よっしゃ、がっつり食ったるぞ。
注文したのは美味御膳、1400円。

イメージ 3その他にも、同じ値段でお刺身御膳や天麩羅御膳、にぎり寿司御膳などがある。
中に一つだけ980円のお得な御膳なんかもあって、予算と用途によって色々選べるようになっている。

筆者が注文した美味御膳は膳の他に一人用鍋が付いてくる。
また1200円以上のランチには、もれなく選べる飲み物が付いてくるという。
そしてこの店、席が個室となっているのもうれしいところ。

イメージ 4お料理は十分ほどして出てきた。
刺身や天麩羅、煮しめに焼き魚がのった御膳を中心に、味噌汁、ご飯、香の物、茶碗蒸しが付いてくる。
まずは一口。
うーん、旨い。
料亭風の薄味。
だが、京都ほどには味は薄くなく、京料理と普通の料理の中間くらいの薄さ。
それが何だか心地いい。

イメージ 5天麩羅はなんといってもえび天が最高。
身がぷりぷりしている。
意外に良かったのが味噌汁で、ダシの味がよく出ていた。
はっきりとした味。
そして最後には味噌のコクもあって。
自慢の一人鍋は、出汁の味が少し甘めで美味。

これでドリンクまでついてくるとは。
大満足の昼食でした。

イメージ 6その後は、丸亀の猪熊美術館へ。
天才写真家アラーキーの写真展だ。
何だかわくわくするな。

「私、写真」、荒木経惟、会期 2017.12.17 日曜日から 2018.3.25 日曜日まで、開館時間 十時から十八時まで、入館は十七時半まで、入館料、一般950円。
さらに驚きなのが、なんと館内撮影OKとのこと。
すごいな。

イメージ 7で、展覧会。
まず入り口にある写真でいきなりジャブ。
というよりヘビー級のKOパンチというべきか。
荒木さんの父と母の死んだ姿の写真がそこに。
モノクロで撮られていて、特に難しいことをしているわけでもないのに、とにかく画面が強い。

死者の写真と言えば、荒木さんの妻、陽子さんの死んだ姿を撮った写真を巡って篠山紀信さんと大論争になったあの事件を思い出す。
しかし、この御両親の写真もそれに負けないくらいインパクトがすごい。

イメージ 8とにかくリアリズムという点においては、死者の写真というのは、その極北のように思う。
ただし荒木さんの場合、そのリアリズムの極致のはずの画でも、どこか虚構の匂いがする。
或いはそれが、荒木さんの個性なのかもしれぬ、と思いつつ。
でもそこがとても面白い。

続く、「空景」や「遺作 空2」などでは、きれいにプリントされた写真の上に絵具で色を重ねてゆくという手法で、現実にはあり得ないような色と風景を創り出していた。
イメージ 9そうして虚構の色を重ねることによって、自然の奥にある何かを捕まえてこようとしているかに見えてくるのが不思議だ。
これも面白い手法だと思った。

しかし写真一つ一つがどれも強い。
さすがアラーキー。
入って五分くらいでその世界観に魅了されてしまった。

次いで、地元丸亀市出身の前衛生花作家、中川幸夫さんを悼んだ作品「花霊園」。
イメージ 10この作品は、なんと和紙にプリントされているという。
筆者は最初それと知らずに、ライカで撮ったような独特の柔らかいタッチの作品だなと思っていた。
でも荒木さんはライカは使ってないはず。
ええー、どういうことだろう、と思っていたら和紙プリントとのこと。
それで合点がいった。
あの柔らかさはカメラではなく、紙の質によるものだったのである。

この花霊園においても、荒木ワールドは炸裂していて、人形と花の組み合わせによって独特の世界観を表現している。
イメージ 11
首のない人形、朽ちてゆく花、少し色褪せたような質感など、異形の美しさに満ちた、ちょっと退嬰的な耽美の世界が繰り広げられる。

変わって、面白かったのは「北斎乃命日」。
これは葛飾北斎の命日、四月十八日と荒木さんの誕生日、五月二十五日の二つの日付で撮られた写真群。
作品は猥雑で、例えば「イナズマ級の男性活力」などの卑猥なポスターや、女性のヌード、そして食べ物の写真などがずらりと並べられている。
生と性は同義で、生きることは実は傲慢なことであるということがよく表現されていると思った。
健康も度が過ぎると人間、自己中心的で傲慢になってくるが、そのような人間の「原罪」とでも言えるどうしようもなさ、人間の本質が鋭くえぐり出されている作品群である。

イメージ 12
「遺作 空2」の中には、男性器と女性器を思わすような独特の際どいモチーフも散見される。
それは別の作品「エロトス」にも見てとれる。
荒木節全開である。

一方、「青の時代」においては、何気ない下町の情景の中に青の絵具を塗り重ねた、ちょっと冷めた感傷が印象的な作品。
これがけっこうよかった。
何だか懐かしいような切ないような。
曰く言い難い味わい。

イメージ 13モノクロの「死現実」では、ごてごてとした画面構成の中に、かえって死の匂いが濃厚に立ち込めてくるし、一方、色光線の巧みな光の捌き方が印象的な「ネオエロポリス」では、セピアの中に封じ込められた都会の闇が蠢いている。
そして、「恋人色淫」の女性ヌードと色絵具の饗宴には理屈抜きで痺れた。

以上、駆け足で見てきた展覧会だが、見終わった印象は、さすがだな荒木経惟と言うもの。
とにかく、写真の画面の強さが文句なしにこっちに響いてくる。
イメージ 14近年稀にみる、素晴らしい展覧会であった。
皆さんも是非、美術館まで足を運んで欲しい。
生で見るプリントの迫力、細部まで目を凝らすことのできる生ならではの臨場感を是非、その眼で味わってほしい。


美味しい昼食を出してくれた丸亀平山「遊食房屋」の皆さんに感謝。
最高の写真を見せてくれた荒木さんに感謝。
その写真を私達に引き合わせてくれた丸亀猪熊美術館の皆さんに感謝。
そして今日も最後まで読んでくれたあなたにありがとう。

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