本日はグルメ情報とコンサート評です。
まずは電車で高松へ。
九時十九分発、快速サンポート号、九時五十五分高松着。
天気は薄曇り。
ちょっと霞んでいるところが何となく春っぽい、そんな感じ。
少し早めに高松に乗り込んだのは、趣味の写真撮影のため。
散歩しながら気になったものを撮って行く写真漫歩を楽しむ。
本日お世話になるのは高松商店街丸亀町グリーンにあるレストラン大戸屋。
この店、高松のゆめタウンにもあって、最近こそ行ってないものの以前はちょくちょく通っていたものだった。
この店、このテの全国チェーンの大手レストランにしては珍しくメインのメニューに魚料理がどどんと提示されているのが売り。
もちろん肉料理の方も充実しているのだが、やはり大戸屋と言えば目玉は魚だろう。
とは、勝手な筆者の思い込みなのだが。
最近でこそ、ファミレスなどでもちらほらと魚メニューを目にする機会も増えてきたが、大戸屋が高松ゆめタウンにできた頃には魚料理をメインにする店と言うのはまだ珍しかった。
まあ、もっとも和食や割烹というところに目を向ければ魚を出しているお店は多くあると言えばあるが。
だが、そのテの店も刺身などが主で、例えば大戸屋の売りである焼き魚などは結構数が少なかったと思うのである。
という訳で、この店に昔からあるメインの魚メニュー、「しまほっけの炭火焼定食」、965円税込を注文。
料理の構成は至ってシンプル。
魚の焼き物を中心に、ひじきとわかめの付け合せと大根おろし。
そこに味噌汁とご飯と香の物が添えられて。
バランス的にちょっと野菜が少な目なのが残念だが、値段と見合わせると充分な量とも思えるがどうだろう。
主菜のしまほっけは脂の乗りがすごい。
肉に比べるとどうしても地味な感じのする魚だが、こうして出されると充分に肉に対抗できる逸品となっていることが理解できる。
魚は骨付きで、身自体はあっさりした味。
だから全体としては脂が乗っているもののしつこさはない。
付け合せの大根おろしが甘くてびっくり。
いい大根を使っているのだろう。
細部にまで隙がない。
ご飯は五穀米で、美味しすぎない贅沢が味わえる。
たしかにこの店はどの品も過剰なところが全くなく、素材の味に忠実で身体にやさしい感じが徹底されているように思われる。
それでいて十分に美味しいのだから、これはやっぱり最高の昼食と言えるだろう。
ちょうど焼きあがったばかりだという「濃厚ショコラタルト」、237円にコーヒーを組み合わせる。
〆て537円。
店に入ったのはちょうど昼時だったので店内は空いていてゆっくりできた。
持ってきた雑誌を読みながら、至福のひとときを過ごす。
まいうー。
珈琲も本格的な味。
これで使い捨て容器でなかったら言うことはないのだが。
ここで一言。
地球環境のため、再利用が可能な昔ながらの使い捨てでない瀬戸物などの容器を採用することも検討していただければ嬉しい限り。
その後、商店街をぶらぶらしながら。
宮脇書店や三越などを回って、本日のメイン、コンサートへと。
2016.2.28、日曜日、「NHK交響楽団演奏会 高松公演」、アルファあなぶきホール大ホール、全席指定、S席前売り、6000円、十三時十五分開場、十四時開演。
指揮、リオネル・ブランギエ、1986年フランス生まれ。
バイオリン、アラベラ・美歩・シュタインバッハー、ドイツ生まれ、ドイツ人の父と日本人の母を持つ。
さて、毎年一回は高松に来てくれているN響だが、公演日が日曜となる機会はなかなかない。
筆者のように高松まで移動に時間のかかる場所に住む者にとって、平日夜の公演を見るのは難しい。
だが、今回は日曜の昼間の公演。
千載一遇のチャンスじゃないか。
という訳で気合入れて買いました、S席6000円。
以前にも一度だけ生で見たことがあるN響のコンサート。
とにかくハズレのない演奏をしてくれるというイメージ。
さすが日本最高レベルと言われるオーケストラだけのことはある。
十四時過ぎ開演。
客席は満席で三階席までびっしりと埋まっている。
チケットは完売で当日券はなかったそうだ。
さすがですね。
前半を彩るのは、チャイコフスキーの「ヴァイオリン協奏曲 ニ長調 作品35」。
コンサートなどでよく演奏される有名な曲である。
まずびっくりさせられたのは出だしのオーケストラの中低音のスムースな響きの美しさ。
何とも耳に心地いい滑らかで美しい音なのである。
その音はまるでライカのシャッター音のようでもあり、またライカで撮った写真のような落ち着いた気品が感ぜられるようでもある。
全体での一瞬の瞬発力の部分はもちろん、地の部分の何気ない音一つ一つにも高い完成度を誇っているところが素晴らしいではないか。
バイオリンの美歩さんは、山場での爆発力はもちろん十分に持っているのだが、どちらかと言えばどこまでも伸びていくような高音の響きに独特の味があり、それを生かしながら朗々と歌う部分にこそ、この人の真の持ち味があるように思う。
大盛り上がりの第一楽章の後、ロシアの沈鬱な冬を思わせるような短く暗い第二楽章が続く。
そして、曲は最後の第三楽章へと。
N響も美歩さんも全力を出し切っての激しい応酬が続く。
いやあ、こういうのが見たかったんですよ。
そのあと、ソリストの美歩さんへのアンコールが一曲あって前半終了。
十五分の休憩の後、後半へと。
後半はムソルグスキー、「組曲 展覧会の絵」、ラヴェル編曲。
後半もあのN響のぎらついたところの全くない、耳にとっても心地よいスムースな地の音から始まる。
そして冒頭にあの有名な旋律が提示される。
筆者がこの曲を初めて知ったのは、1970年代を代表するプログレッシブロックの雄、ELPによる演奏でのことだった。
父親がラジオから録音していた、カセットテープに残っていた音源である。
筆者が中学生くらいの時であろうか、一時、この曲を聴き狂った覚えがある。
キース・エマーソンのキーボードソロのかっこよかったこと。
後年、テレビなどでこの曲を弾くキース・エマーソンがキーボードの上に乗って半狂乱の状態で演奏するのを初めて知ったのだが。
しかしその演奏に一歩も引けをとらない凄まじい音を聞かせてくれたのがこの日のN響。
特に打楽器と低音のリズムの決まり方が半端なく、ほぼ完ぺきといっていい華麗なるオーレストレイションを聞かせてくれる。
ただ強いだけの音でなく、管弦楽との音のバランスもほぼ完ぺきに決まっていた。
空恐ろしい位の完成度の高さである。
管楽器なども、出だしで音が裏返るようなことも全くなく、音が消えてゆく余韻などもほぼ完ぺきといっていいくらいの出来。
どこをとってもワンランク上の演奏という印象。
細部まで魂の宿った好演と言えよう。
そして時折見せる凄まじい爆発。
時には低音、時には高音。
そしてあのラスト。
「キエフの大門」、もう言葉にできないくらいの圧倒的な演奏。
打楽器も絡めた、オーケストラ一体となった分厚いサウンドで会場内がビンビンに震えるような感動がそこにある。
リズムドンピシャ、加えて音のバランスもドンピシャ。
もはや言葉では表現できない完全なる音世界。
当然、会場からはブラボーの嵐。
やっぱり凄いなN響。
アンコールは一曲で、ドボルザークのスラブ舞曲。
これも凄かったんですよ。
充分にこなれた音で。
最後に。
二、三万若しくはそれ以上する、海外有名オケの来日公演もいいのかもしれないが、わずか六千円でこれだけの演奏を聞かせてくれるオーケストラをこれからも私達は大事にしていかなければいけないのではないだろうか。
大満足の二時間弱でした。
安全運行に務めてくれた鉄道関係者の皆さんに感謝。
最高の昼食を提供してくれた大戸屋の皆さんに感謝。
至福のひとときを与えてくれてループの皆さんに感謝。
これ以上ない完璧な演奏を聞かせてくれたN響の皆さん並びにコンサート関係者の皆さんに感謝。
今日もまた最後まで読んでくれたあなたにありがとう。