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Channel: 文芸 多度津 弘濱書院
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ランチ&展覧会

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本日は美術評とグルメ情報です。

イメージ 1まずは車で高松へ。
展覧会の前にとりあえず昼食。
今回訪れるお店は高松商店街兵庫町にある定食屋さん「まいしょく家」。
以前にもこのブログで取り上げたことのあるお店。
ホント、久しぶりに入るなあ。

入って席に着きメニューを見ると、秋の新作とかでおすすめはアジフライ定食とか。
アジフライか。
こないだの春の競馬の時に、たしか食ったよな。
そんなこんなで色々迷ったのだが、結局アジフライにしてみることに。
830円、税込。

十分ほど待つとお料理が運ばれてくる。
イメージ 2デカい。
一目見てその大きさにびっくり。
しかも二枚乗せ。
ここのアジフライの特徴は魚の身の厚さ。
しかし分厚い割には噛むととろけるように柔らかい。
一体どうなっているんだろう。
そしてなんといっても抜群にウマい。

この前、庄やさんで食べたアジフライが生涯最高の味だと思っていたのだけれど、ここのもそれと同じくらいのレベル。
イメージ 3いやあしかしびっくり。
一体、今この国のアジフライ界に何が起こっているというのだろうか。
我々は、この事態を前においしすぎ警報を発令しなければならないだろう。
これは一刻の猶予も許さぬ緊急事態なのだ。
あな、おそろしや、おそろしや。
大、大、大満足の昼食でした。

その後は展覧会。

イメージ 4

2017.9.24 日曜日、「没後四十五年 鏑木清方展」。
高松市美術館、会期 2017.9.9(土)から10.15(日)まで、月曜休館(祝日は除く)、時間 九時半から十九時まで、日曜は十七時まで、入室は閉館三十分前まで、一般千円。

イメージ 5それではここで鏑木清方さんのプロフィールを紹介。
1878年(明治十一年)東京神田の生まれ。
1891年(明治二十四年)浮世絵師の系統を引く水野年方に入門、十四歳。
十七歳の頃には父の経営していた新聞に挿絵を描いており、十代にしてプロの挿絵画家だった。

1901年(明治三十四年)仲間の画家らと烏合会を結成。
この頃から、挿絵ではない本絵(大きな画面で展覧会出品用に描かれた独立した本格的な絵画)を描くようになる。
1927年(昭和二年)第二回帝展に出品。
「築地明石町」で帝国美術院賞。
この頃から日本画の大家としての評価が定まる。

1944年(昭和十九年)帝室技術員。
1954年(昭和二十九年)文化勲章。
1972年(昭和四十七年)九十三歳で没。

イメージ 6この展覧会を知ったのは、たしかゆめタウン高松一階のサービスカウンターでのことだったと思う。
売り場の掲示板にポスターが貼られていて、前売り券あります、と。
そのポスターに描かれていた絵が絶品で、そのあまりの美しさに魅入られた私は気が付くと財布に手が伸びていたという次第。
それが七月か八月のこと。

お恥ずかしながら、鏑木さんのことについてはそれまで全く知らなかった。
でもそのポスター一枚で、この世にはこんなに美しい絵を描く人がいるのかと改めて感慨を深くした。

イメージ 7さて展覧会。
作品はだいたい、年代順に展示してあるみたいである。
まず初期の頃、つまり明治の頃の作品は、背景の描写などに西洋風の遠近法が用いられているのが特徴。
その後、次代が下るにつれて伝統的な日本画にみられるような、装飾的もしくは単調な背景へと変遷していく。
一口に日本画といっても、時代時代によって様式もだいぶ違うのだろうが、鏑木さんの受け継いでいる日本画の様式は主に江戸時代の浮世絵の技法のものからだろうと思われる。

その後、大正から昭和にかけて技法的には完成の域に達しているとみられ、以後はその高い水準を見事に維持しながら、淡々と画業をすすめているといった感じ。

しかし日本画の描写というのはほんとに独特のものがあるなあ。
写実をどんどん繊細に突き詰めてゆくことで、時代を経るにつれて、より微細により小さな差異の描写にこだわることで時によっては絵画の解体をも辞さない西洋絵画と違って、日本画の描写は細部をそれほどまでに細かくは描かない。
にも関わらず、見た目には肉眼でものを見た時の印象にとても近い感触がある。

イメージ 8
それはまるで往年のカメラの名機ライカのファインダーのよう。
例えば、ライカM3の伝説的ファインダーは素通しの画面なのに、それを覗くと現実よりもより美しい世界が見えてくるようになっているという。
そのせいでそれを扱う者は写真が上手く写せるように感じられるというが、日本画の描写もそんな感じであろうか。

髪の毛や着物のひだなど、緻密な描写という観点から見ると一歩後退かなと思えるような簡素な描き方にも関わらず、出来上がった作品を見ているとそれはとても目に心地よくなにかしら胸の奥がすっきりとするような透明感と清涼さに満ちている。
そして何より肉眼で見た時の印象にとても近い。

とにかく色もきれいでどぎついものが全くないので、展覧会のように長い時間、集中して作品を見続けていても、嫌な目の疲れというのがほとんどないのも特徴。

イメージ 9全編を通して、江戸情緒、ひいては日本情緒の粋を楽しめる優れた展覧会だ。
大きな本絵だけでなく、鏑木さんが卓上芸術と称した挿絵なども展示されていて見所はいっぱい。
その卓上芸術には、筆の動きや息遣いが直接的に感じられる生な感触があって完成された本絵とは違う独特の味わいに浸ることができる。

イメージ 10〆て全四十九作品は、見応え十分。
改めて日本画の良さを再確認できるまたとない機会。
あなたも是非その眼で直接確かめに来てみませんか。
見に来てまず損はないですよ。

しかし今日は大当たりの日だったな。
メシは旨かったし、絵も最高。
言うことなしの幸せな一日でした。
ありがとう。



美味しい昼食を提供してくれた「まいしょく家」の皆さんに感謝。
最高の絵を見せてくれた鏑木さんに感謝。
その絵に出会わせてくれた高松市美術館並びに関係者の皆さんに感謝。
今日も最後まで読んでくれたあなたにありがとう。

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