本日は観劇、バスツアーの模様を。
朝五時起きで出発に備える。
あいにく当日はこの冬一番の大寒波が訪れた日。
何より寒いし雪の心配もある。
県内だけの移動なら何の問題もないようだが。
しかし、暦の上ではもう春なんだけどな。
まあ、愚痴ってもしょうがないか。
楽しく行きましょうよね。
旅情だなあ。
高松周辺を走っている時にちょうど日の出直後の朝日を拝むことができた。
十一時前、梅田着。
着いてすぐ昼食。
昼、お好み焼きはどうかとネットであらかじめ調べておいた店へ直行。
四季劇場が入っているビルの隣にあるビルの地下二階のレストラン街にあるお店、「千房」。
何と言ってもお一人さまだもんね。
そこで狙いを変えて、お好み焼きとサラダを注文することに。
ついでに生中も頼んだ。
道頓堀焼き、1436円、サラダは早採りネギのサラダ、476円。
まず最初に運ばれてくるのは生中。
ありがたや、ありがたや、何はさておきとりあえず一杯。
まいうー。
これも美味い。
店員に聞くと、ごまだれとみそだれと和風ドレッシングがかかっているとか。
とにかくこのソース風のドレッシングの味が抜群なのである。
濃厚なソースが野菜の爽やかさによく合っている。
その間にも、店員は機敏な動きで複数のお好み焼きをテンポよく仕上げてゆく。
色々な素材とそれに合わせた道具があって、見ていて飽きない。
お好み焼きは二十分ほどしてから。
最適の焼き加減に達するにはやはり少し待たねばならぬようなのである。
出来上がったお好み焼きはソースにマヨネーズ、かつおぶしに青のりをたっぷりかけて。
まずは一口。
旨い。
具材の良さやその豪華さがどうのとかいう旨さではなくて、お好み焼きの基底となっている地の粉の旨さ、焼き加減の妙による旨さだと思う。
ちなみに今回、お好み焼きを焼いてくれた店員はなんと筆者と同じ四国出身、愛媛の人(筆者は香川)だという。
神様の采配は一見でたらめのように見えて、実は細部に至るまで計算され尽くしている。
今回改めて、縁の不思議さを思った次第。
美味しい昼食に合掌。
その後、大阪駅中の店で夜の弁当を買ったりお土産を買ったりした後、本日のメインである、観劇へと。
十二時半開場、十三時開演、大阪駅前ハービスエント七階、大阪梅田四季劇場。
席は真ん中右辺り。
中に入って、まず圧倒されるのは舞台セット。
ご覧の通り、色々な廃材やガラクタが所狭しと壁一面に貼り付けられている。
現代美術のパピエ・コレのようでもあり、またこれも現代美術の作品、ジム・ダインのごみ箱のようでもあり。
何やら騒々しくてアナーキー雰囲気が会場全体に漂っている。
このキャッツ、原作を書いたのは詩人のT.S.エリオット。
アメリカ出身の現代詩の大家で、元銀行員でハーバード出の秀才。
後に英国のオックスフォードににも通い、ついには英国人になったという才人。
宗教は元プロテスタントのユニテリアンだったのだが後にはその信仰を捨て、より保守的なカトリック(アングロカトリック)、つまり英国国教会へと転身している。
そのような背景もあり、人生の後半においては、カトリック色の強い宗教詩なども多く残している。
そんな人の作る物語だからか、その内容の一番深い所においては、カトリックの奥義とも言うべき秘蹟の匂いが立ち込める作品となっているように思われる。
物語のあらすじを一言で言うと、年に一度集まる猫達の集会で、その夜舞踏会が開かれる。
その時、ただ一匹の猫だけが、全ての猫達の代表として天上の世界に生まれ変わることを許される。
つまり全ての猫の生命を受け継ぐ存在となるわけである。
オープニングの合唱と総出の踊りの圧巻から、一匹一匹の猫達の紹介へと話は進んで行く。
ここら辺りは筋書きうんぬんというより、ロイドウェバーの無尽の音楽と踊りを楽しむ所という感じ。
また劇中で歌われる、猫はたった一つの本当の名前を持っていてそれは人間には決して分からないというエピソードも意味深で面白い。
これぞカトリックの奥義ではなかろうか。
日本の伝統宗教とも通ずるような。
日本でも平安時代など、高貴な身分の女の人の本名というのは、通ってくる男に対して最後の最後まで明かさなかったという。
なんでも昔の人の考えによると、女が男に自分の本当の名前を教えるということは魂の一番深い部分を明け渡すことになる極めて危険な行為らしかったのである。
ロックンロール、ジャズ、教会音楽、バラードとロイドウェバーの筆が冴えわたる。
前半最後はキャッツと言えばこの曲、名曲「メモリー」で。
二十分の休憩後、後半へ。
まあ、前半もそれなりによかったのだが、ほんとに凄いのは後半だった。
後半はとにかく初手から全開。
見ているこっちは思わずあんぐり。
物語の強度も音楽自体の強度も前半に比べると数段上。
後半最初に出てくるのは、今や落ちぶれた役者猫。
年老いた猫の人生の哀愁を漂わす演技はまさに秀逸。
大人の鑑賞にも堪える絶品の演技。
いやあ、こういうのが見たかったんですよ。
その後の寝台急行の猫、今でいうところの「乗り鉄」か、この歌と踊りも凄かったな。
とにかく、ロイドウェバーの描く楽曲が素晴らしいのである。
そしてそれを血肉化し、体現する役者さん達の素晴らしさ。
とにかく、前半の内容が思わずすっ飛んでしまうくらいの後半の凄さである。
中身が濃いねえ。
更には、前半からしばしば登場していた悪党猫。
そしてその悪党猫にさらわれた教会猫を救いだすために現れたマジシャン猫。
このマジシャン猫の登場するシーンは、歌よりも踊りが印象的な場面。
だからか、キャスティングもそうなっていた。
踊り中心の人選。
実に見事なダンスでした。
そして天界へ上ることを許される猫が選ばれるシーン。
これはあまり詳しく言わないほうがいいんだろうな。
ただ、選ばれた一匹の猫が歌うラストの「メモリー」の歌唱は凄かった、と。
当たり前だが、今日一番の出来だった。
最後は猫達の合唱で。
皆、一段とギアが入って全力の歌唱に圧倒される。
いやあ、すごいなあ。
昼間から一杯入っての観劇。
世の中にこんな幸せがあっていいんでしょうか。
なんかバチが当たりそうな。
ミュージカル全体の感想としては、作曲家ロイドウェバーの筆において若干若書きの感もあるようにも感ぜられたが、しかし逆にそれがとてもいい方に出ている作品だと思った。
若書きだからこそ出てくる曲の勢いとか、感性の発露とか。
とにかくそういう感じ。
最後に。
生で観ろよ。
ちゃんと金払って。
それだけの価値はあるから。
安全運行に務めてくれたバス運転手さん、添乗さんに感謝。
穴吹トラベルさんに感謝。
美味しい昼食を提供してくれた千房のみなさんに感謝。
最高の演劇を見せてくれた四季のみなさんに感謝。
そしてそれを陰で支えてくれていた四季劇場のみなさんに感謝。
温かく出迎えてくれた大阪のみなさんに感謝。
今日も最後まで読んでくれたあなたにありがとう。