本日は紀行です。
丸亀駅六時二分発のJR特急にまずは乗る。
朝四時半起きで備える。
そこから新幹線で新大阪に出て、環状線に乗り換えて鶴橋まで出る。
そして鶴橋から近鉄特急に乗るという算段。
心配なのは天気。
初日は大丈夫そうだが、二日目は雨模様の予報が。
さてどうなりますことやら。
特急券を見せるとホームの足元番号を教えてくれる。
そして明るく元気なおはようの声。
今日もいい一日になりそうだ。
列車に乗る時はまだ暗かったけど、岡山に近づく頃には夜明け前。
車窓から見える夜明け前の空が美しい。
暗く重い青を基調に限りなく透明に近い青が重なっていて、そしてそこに差してくるほのかな紅の色。
なんという美しきこの世界。
のぞみに乗る。
席の前後がとてもゆったりとしている。
また、揺れも少なく大変乗り心地がいい。
新大阪からは大阪駅に出て、そこから環状線に乗り換える。
この環状線、着く駅毎に発車ベルの音楽が違っていて面白い。
桜ノ宮駅では大塚愛さんのさくらんぼが鳴っているし、森ノ宮駅では森のくまさんといった具合。
他にも、アメリカの古い曲やメリーさんの羊が鳴っていたり、大阪城では法螺貝の音だったりと興味が尽きない。
上本町の駅構内と直結している近鉄百貨店で昼の弁当を仕込んで行く。
憧れの近鉄特急は、落ち着いた黄色の車体にブルーの帯が清々しい。
滑らかな加速とスムースな走行が楽しめる。
行きはご覧の通りの普通の特急だが、帰りはしまかぜという近鉄が誇る最新の特急列車に乗れる。
詳細はまた後ほど。
水了軒というところの御堂筋弁当というのを買った。
和風弁当で料亭の味といった感じ。
濃過ぎず薄すぎずの絶妙の味加減。
さすが大阪、文句なしに美味い。
近鉄特急はJRと比べるしそれほど速くは走らない。
でもそこがいい。
車窓の景色と相まって織り成されるこの関西ローカル感。
なんとも乙な味である。
今日は神宮の外宮をお参りする。
駅から外宮までは徒歩五分ほど。
両脇には店がずらりと並んでいる。
伊勢うどんの店やら、お土産店やら、真珠の店やら。
外宮の中は広い。
森の中のような凛とした空気が印象的。
背後はそのまま山に連なっているのだろうか。
手付かずの自然がそのまま残されているようなそんな感じ。
外宮の御本尊は豊受大御神で食べ物の神様らしい。
なんでも伊勢内宮の神様、天照大御神に捧げる食事を全て司っていらっしゃるとか。
しばらく歩くと本宮に着く。
神社で使われている木は遠目に見ると白木のように見える。
塗装とかニスのような類のものが使われているようには見えない。
残念ながら素人目には分からなかった。
しかしその素人にも分かるのは使われている木の素性の良さ。
真っ直ぐでとても美しい柱であり木材である。
さすが伊勢。
その後、境内をゆっくり回って参道の土産物屋を冷やかした後、近鉄線に乗って鳥羽まで出て今宵の宿へ移動することに。
今宵の宿は鳥羽グランドホテル。
しばらく待つとバスが来る。
バスに揺られて七、八分ほどで着く。
ちょうど小高くなった岬のてっぺんにある。
フロントに入ってびっくり。
鳥羽の海が眼下に広がる絶景。
これはすごい。
フロントの応対も親切で、セルフサービスだがウェルカムドリンクもある。
筆者はレモン水を頂いた。
海の見えるロビーでデッキチェアに腰かけながら、飲み物を一杯傾ける贅沢なひととき。
今日は来てよかった。
部屋は和室の十二畳半。
角部屋でこれまた眺めがいい。
なんともありがたい限り。
大浴場は清潔で行き届いた感じ。
お湯の加減もいい具合。
そしてそこにも眺めがいい露天風呂があって。
総じて風呂は、まあびっくりするようなものは何もないとも言えるが、何だか全体の感じはすこぶる良くて水準以上の感じというのがそこかしこに感ぜられるのが特徴。
好感度がとても高いとでもいうのか。
十八時ちょうど、お料理が運ばれてくる。
豪華だな。
前菜三品に御造り、そこに伊勢海老の陶板焼きがついて、女性にも嬉しいコラーゲン鍋なるものも。
ちなみにコラーゲン鍋には泡豆腐というのが入っているそう。
筆者は初めて食べる味。
豆乳鍋のような感覚で濃厚で美味しかったです。
それにご飯ものは釜めしがあって、後からホタテの入った茶碗蒸しにお吸い物が出てくる。
前菜の胡麻豆腐が独特のコクでまず舌を魅了する。
それがとてつもなく美味しくてそれだけでもうKO寸前。
御造りも鯛の刺身は醤油でなく梅だれに付けて食べる。
これも美味しかったなあ。
追加で(有料)あわびの踊り焼き一つと松坂牛のサイコロステーキ一人前を取って四人で分けた。
これがまた美味いんだ。
あわびは思ったより柔らかいし、松坂牛は脂が乗っていて旨味が一段と濃かった。
いやあ、贅沢だなあ。
晩酌を一杯やりながら食べたので、その後、歯を磨くのも忘れてぐっすりと眠りこんでしまった。
まあ今日は朝早かったからな。
ちなみにロビーでは夜、二胡の演奏が行われていたらしい。
また海の三ツ島のライトアッブもあったとか。
二胡の演奏の後はジャズの演奏会もあったらしく、アルコール類を楽しみながら、充実のナイトライフを楽しめる趣向となっていたらしい。
それにしてもこの日はよく寝たな。
朝食はバイキング。
品数も豊富で味もよい。
そして何よりうれしいのは、温かいものは温かく、冷たいものは冷たく出してくれているところ。
普通の料理では当たり前のことだが、バイキングでそれを達成するのはなかなか難しい。
それにしてもここの旅館は料理が美味しい。
幸先のいい二日目のスタートとなった。
四階レストラン、三ツ島にて。
八時半チェックアウト。
旅館の人が総出で見送ってくれる。
いい宿だったな。
送迎バスで鳥羽駅まで出て、五十鈴川駅まで。
ところがここで事件が。
それは鳥羽駅の待合室で列車を待っていた時のこと。
しゃれた格好をしていて顔がとても小さく足が長い。
やっぱ芸能人。
ちょっと違うのである。
思わず、父母が一緒に写真を撮ってもらっていた。
山川さんのお兄さんが同じく歌手の鳥羽一郎さんで、二人揃ってやっぱり鳥羽が地元なんだろうな。
里帰りでもしてらしたのか。
タクシーに乗るとちょうど雨が降り出してきた。
運転手さんによると、少し降った方が下が湿って埃が立たなくていいとか。
なるほど考え方一つというわけ。
内宮はとにかく広い。
が、鬱蒼とした感じはあまりなくて、明るく開放的な雰囲気が特徴。
適度に人の手が入っているということだろう。
ようやく正宮に到着。
拝殿の中央部には薄いベールがかかっていて中の様子を窺い知ることはできない。
昔の京都御所の天皇さんの御簾のよう。
伝統の知恵が詰まっているのだろう。
手練手管の百戦錬磨の融通無碍の変化の技。
しかし雨なのに参拝客は多い。
さすがお伊勢さんである。
餅、やわらかっ。
ほうじ茶も美味しい。
それにしても、こんなにも美味しいほうじ茶というのは初めて。
しっかりと茶葉の味が出ている。
しばらく、おはらい町やおかげ横丁を散策して帰途に着く。
しかし、おはらい町の賑わいは凄かった。
通りには溢れんばかりの人がいて、しかも雨なので傘が乱立して歩くのがやっとという感じ。
さて帰りの特急は近鉄が誇る最新車両、しまかぜ。
座り心地は超絶で、今まで乗った列車の中では最高の座り心地。
新幹線のグリーン席より凄いのではないだろうか。
席は前後もゆったりと空間が取られていて、贅沢感が半端ない。
リクライニングなどは全て電動。
インテリアもモダンで洒落ている。
加速は滑らか。
喫茶飲食のできるカフェ車両も付いているし。
もちろん、双方ともしっかりと見学してきましたよ。
それにしてもなんだか乗っていてわくわくするような列車である。
こりゃ乗れてよかったわ。
ちなみに筆者は、車内販売でお茶を注文。
玉露入りの緑茶だそうで、おいしかった。
さて楽しかった旅もそろそろ大詰め。
柔らかいのに、しかし中にはしっかりと芯がある。
そして表面はふわふわでもちもちで。
出汁も単なる醤油ではなくて、しっかりと出汁の味がしていたし。
その後、五十鈴川駅の駅前で入った喫茶店、この店もよかった。
お客さんを喜ばす嘘のない本物の仕事ぶりにも関わらず、お代はそれほど取らない。
しかも愛想が良くて。
ある意味、理想の喫茶店、理想の商売の形というものを見せてもらったような気がした、そんなお店でした。
今回も色んな店や人、そして神様に出会えた楽しい旅でした。
ホント、いい旅だったな。
安全運行に務めてくれた、JRのみなさん、近鉄のみなさんに感謝。
最高の宿を提供してくれた鳥羽グランドホテルのみなさんに感謝。
ありがたいお伊勢さん、外宮、内宮の神々様並びに関係者のみなさんに感謝。
おかげ横丁、おはらい町のみなさんに感謝。
五十鈴川駅前の喫茶店に感謝。
そして今日も最後まで読んでくれたあなたにありがとう。