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Channel: 文芸 多度津 弘濱書院
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第六十三回 日本伝統工芸展 高松

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イメージ 12017.1.3 火曜日、伝統工芸展 高松、香川県立ミュージアム、会期、一月二日 月曜日から一月二十二日 日曜日まで、会期中無休、開館時間 九時から十七時まで、金曜日は十九時半まで、入場料 一般610円。

毎年新春恒例のこの展覧会、今年もやってきたぞ。
この日は高松三越の初売りの日ということもあって、家族も高松に行くということで、その便に乗せてもらうことに。
つまり車で高松ということ。

車で高松、久しぶりだな。
あ、でもつい先日、車で来たか高松、初詣の時に。
その時はゆめタウンに寄ったんだった。

イメージ 2そして展覧会。
入り口でJAF会員証を見せると割引があって、490円で入ることができた。
それにしても、今年はどんな作品に会えるんだろうと入り口にたたずみながらわくわくしているワタシ。

入ってすぐ、わが香川の誇る漆芸の人間国宝お二人の作品が出迎えてくれる。
どちらも素晴らしいのだが、特に筆者が惹かれたのが、山下義人さんの「ふゆつばき蒟醬水指」という作品。

イメージ 3左の写真がそれ。
美しい黒地の中央に椿の文様があしらわれているのだが、その椿の描写があえてアバウトな感じで表現されていてなんだか味がある。
きっちり描くこともできるんだろうけど、それだとやりすぎの感も出てくる恐れがある訳で。
そこら辺りの加減が絶妙だと感じ入った。

しかし漆芸というのはやはり生で見るのが一番いい。
作品によっては、例えば有名作家さんのものなど一部ガラスケースでの展示となっているのだが、ケースに入ってない素のままの展示がなされている大多数の作品は、場内の照明に照らされて得も言われぬ美しさを湛えている。
是非、現場に足を運んでその眼でご覧になってほしいものである。

漆芸全体を見ての感想は今年は石川県勢の活躍が目立っているようだったということ。
輪島や能登。
金色のイメージが強い石川県勢だが、本当の魅力はその下地の黒の素晴らしさにあると筆者は思っている。
実際、場内にもそういう作品がいくつもあって目を楽しませてくれた。

イメージ 4
最近、香川県勢は一時の勢いがないようなのが気になるが、出ている作品はどれも水準以上の出来であった。

それでは漆芸から気になる作品の紹介を。
「蒔絵秋景色紙箱」、市島桜魚。
金地に秋のすすきだろうか。
よく見ると数ヵ所、すすきの穂先に小さな銀の球が付いているのだが近寄ってよく見ないと分からない。
恐るべき細部へのこだわりで、作者の高い美意識を感じる。
全体の調和もとてもいい。

「乾漆色切貝盛器 海」、松崎森平。
まず皿の形がいい。
少し変形の変わった形。
それが海の複雑ながら単調なあの独特の動きをよく体現している。
そこに光る貝の彩を添えた波を思わせる線文。
実に美しい。
見ていると思わず大海に呑み込まれそうになるような秀作。

「乾漆螺鈿蒔絵合子 瀬戸」、松田典男。
すぐ上で紹介した「海」の隣にあった作品。
渦潮を思わせるような天面の黒を基調とした中に形と色で織り成す海の光景が秀逸だ。
思わずうなりました。


イメージ 5


イメージ 6続いて陶芸。
「彩釉器」、田島正仁、左の写真。
賞をもらっている作品だが、実物で見るとさらにいい。
形態の微妙ないびつさと、それに寄り添う色の深みの美しさ。
文句なく傑作だと思う。

「艶消イッチン葡萄文花器」、白石久美。
全体に抑えた色調の艶消しの少し青みがかった白。
その白を基調に青で葡萄の絵が描かれている。
この絵が上手いんだ。
全体の色調もいい。
非常に落ち着いていてしっとりとした風情がある。
ずっと見ていたい感じの作品だった。

「朝鮮唐津水指」、徳澤守俊。
何ということのない普通の水指なんだけれどこれがいい。
何がと言われると困るのだが、とにかくいいと思った。
何だか心の奥深くにじんわりと沁み込んでくるのだ。
好きだな、こういうの。

「黒描鳥花文壺」、米田和。
墨絵のような白黒のすっきりとした画面構成で、鳥の絵が描かれているのだが、これが実に渋くていい。
目立たないけど秀作だと思った。

イメージ 7木工。
「蝋引楓造象嵌飾箱」、丸山浩明、右の写真。
これも写真より実物の方がよく見える作品。
大ぶりの作品で、角のところが三角形にへこんでいる。
生で見るとそれが実に利いているのである。
全体の形の美しさに一つひねりが入ったような格好で見ていて飽きない作品となっている。

金工。
「朧銀菊文鉢」、奥山峰石。
誠に衒いのない余分な飾り気のない、しかし美意識に優れた逸品。
まるで沈潜するかのように隠された美しさは、絶対零度的な緊張感を湛えて美しい。
しかしそんな隠された緊張感をおくびにも出さない表面の静けさは特筆もの。
隠れた傑作だと思った。

イメージ 8再び木工。
今年も木竹工はレベルの高い作品が並んでいる。
どれをとっても切り詰めた形態の美しさが際立つ。
さらには自然の木目を生かした高い美意識による造形は隙がない。

「根曲竹摺漆花籃 颯然」、勝城蒼鳳。
精緻な美を誇る木竹工の中にあって、ただ一つ異質な荒々しさを持っていたのがこの作品。
だが、荒々しいといっても嫌味ではなく、全体は驚くほどきれいにまとまっている。
その中にありながら動的といえる独特の美学が全面に炸裂している。

イメージ 9同じく木工。
「朴造蓋物」、浅野勘太郎。
まず形が面白い。
昔の兵隊さんのかぶるヘルメットのような。
その面白い形に深みある木の素材を生かしながら添えられた色の妙。
見ていると彼方まで連れていかれそうなそんな魅力に満ちている。

最後は七宝から。
「七宝箱 朝まだき」、栗根仁志。
なんとも言えない爽やかな青。
海だろうか川だろうか。
そして空、そこにすすきの穂があしらわれている。
誠に透き通るような清澄さ。

さて駆け足で展覧会の全容を垣間見てきたがそろそろ紙幅も尽きてきたようで。
今回ここでは紹介しきれなかった、着物や人形なども含めて会場は傑作、名作、秀作、佳作のオンパレード。
みなさんも機会があれば是非一度足を運んでみられてはいかがでしょうか。


最高の展覧会を見せてくれた、作家のみなさん、審査員のみなさん、関係者のみなさん、県立ミュージアムのみなさんに感謝。
今日も最後まで読んでくれたあなたにありがとう。
最後にあらためて新年のご挨拶を。
皆さま、明けましておめでとうございます。
今年もよろしくお願いします。

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