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Channel: 文芸 多度津 弘濱書院
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美術展 「ワンロード 現代アボリジニアートの世界展」

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本日は美術鑑賞記です。

2016.8.15 月曜日、「ワンロード 現代アボリジニアートの世界展」、香川県立ミュージアム、会期、八月六日 土曜日から九月十九日 月曜日まで、休館日 毎月曜 ただし八月十五日と九月十九日は除く、開館時間 朝九時から夕方五時まで、入場料 一般1100円。

瀬戸内国際芸術祭2016連携企画、そのため瀬戸芸パスポート提示で入場料は500円に。
また毎週金曜日と瀬戸芸夏会期(-9/4)の土曜日は午後七時三十分までの夜間開館がある。

イメージ 1それではここで、ワンロード展の概要を少し。

オーストラリア西部の砂漠地帯を縦断する一本道。
今から百年以上前、ヨーロッパから来た入植者が北部の牧草地から南部の食肉市場へと牛を移動させるために切り拓いたこの道で、先住民アボリジニは初めて「白人」と遭遇し、その生活を激変させることになる。

2007年、この「ギャニング牛追いルート」をめぐるひとつのプロジェクトが実施される。
かつてそこに住んでいたアボリジニとその子孫であるアーティスト六十名が、ギャニング牛追いルートへと集まり、1850㌔に及ぶその道を五週間にわたって旅したのである。
イメージ 2今回のこのワンロード展はそのプロジェクトの過程で製作された作品による展覧会である。

まずは電車で高松へ。
八時五十七分発の快速サンポート号。
天気は晴れ時々薄曇り。
湿度が高く蒸し暑い。
九時三十六分高松着。

駅から歩いて十五分ほどで県立ミュージアムに着く。
入場料はJAF割引が使えたので、900円で入れた。

イメージ 3さっそく展覧会へ。
まず一目見て感じた作品の特徴は、遠近法が全く使われていないということ。
さらに画面におけるすべての象徴は平面上に等価に並べられている。
丸や線などを中心に構成された抽象性の高い描写が特徴で、いわゆる写実の要素は微塵もなく、その代わりに高い装飾性がある。
そして色彩がとても豊か。

アボリジニアートと言ってもこの作品を作っている人は現代の人だから、若干は現代アートの洗礼も入っているのだろうが、しかしアボリジニに特有の伝統的な古い文化コードというものが作品から感じ取れて大変に興味深い。

イメージ 4このワンロード、つまりギャニング牛追いルートは、それを作った白人たちにとっては単なる商売のための道に過ぎなかったのだが、そこに住んでいた先住民、アボリジニにとっては、その道の周囲にある砂漠地帯こそが自らの生活圏であり、文化の中心地であったのである。

ちなみに作品の中にある丸や四角などは集落や集落の要である井戸などを表しているそう。他にもさまざまな象徴が使われている。

話は変わるが、昔、筆者が若い頃、西洋美術の勉強をしていた時、ルネサンス以降の遠近法を用いた写実的な絵画こそが美の本道であり、或いはそのルネサンス期に手本とされた古代ギリシア・ローマの理想化された人間の肉体美こそが優れた芸術であると勝手に思い込んでいた時期があった。

イメージ 5そんな若き筆者にとって、その二つの輝かしい時代に挿まれたヨーロッパの美術、中世芸術
やゲルマンの美術、或いはアフリカの美術というものは、一見すると下手くそで写実が足りず、繊細さのかけらもない、また美の理想も感じられない劣悪な芸術なのだと思っていたものだった。
つまりそれらは近代西欧のあの輝かしい写実の時代に至るまでの過渡的な芸術であり、一段劣った表現なのだと本気でそう思っていた。

イメージ 6
古典古代やルネサンスを崇拝する若き筆者にとって、一体、そんな下手くそな作品にどれだけの価値があるのかと、いや何の価値もないのではないかと勝手にそう思っていた時期がかなり長くあった。
しかし、美術の勉強を進めて行くにつれ、一見稚拙に見えていたそれらの作品が、実は必ずしも下手なわけでなく、ただ単にルネサンスや古典古代の作品とは美の規範とする基本的な文化コードが違うだけなのだと気付くようになっていった。

そしてそれらの作品を虚心に眺めていると、一見不細工に見えるその中に、いいようのない独自の味わいがあるように感ぜられるようになってきた。
写真の世界に例えていうなら、高精細に映る高機能の現代レンズの描写(それはそれで素晴らしいのだが)ではなく、若干甘いところのあるオールドレンズの味を楽しむような心持ちと言ったら分かってもらえるだろうか。

今回、この展覧会を見てそんなことを思い出した次第。
アボリジニにはアボリジニの世界があり、文化があり、それが独自の個性をもって作品の上に花開いている。
なんと素晴らしいことではあるまいか。

作品はどれもアボリジニが住む世界を象徴的に表しながらも、そこに神話や物語、アボリジニの歴史などを織り込んだ重層的な絵画となっている。
その独特の世界観を存分に堪能してもらいたい。

今回のこの美術展、展示作品の総数が若干少な目でそのせいで入場料が若干割高の感があったのだが、がその分中身は濃いとも言える。
また、付属の展示で讃岐漆芸の展示も用意されているので、そっちと合わせるとたっぷり美の世界を楽しめるようにはなっている。
興味ある人は是非一度足を運んで、生でその世界を感じて欲しいと思う。

イメージ 7さて、見終わった後は食事。
いつもは県立ミュージアムの付属のレストランで食べることも多いのだが、今回は高松三越本館六階にあるレストラン、ランドマークで昼食を。
ここに来ると、大体和食を注文することが多いのだが、今回は中華に。
ちゃんぽん麺セット。

そして暑い日でもあったし、ちょうどお盆の時期でもあったので奮発して生中も頼んでみた。
チンカチンカのルービーってやつをね。

イメージ 8ここのビールはなかなかの味。
きっとサーバーの管理がいいのだろう。
お料理は十分ほど経ってから運ばれてくる。
セットなのでしゅうまいとデザートが付いている。

まずは麺を一口。
透明感のある細い中華麺でコシがある。
野菜もたっぷりと入っているし、だしも若干薄目ながら、ほどよい加減。
食べ飽きしないような乙な味。
しゅうまいも美味しくて、ここの中華を食べるのは初めてだったけどけっこういけるな、と。
それになにより、一杯入っているので、ほろ酔い加減でもう最高。

イメージ 9さて、昼食の後は、しばらく街をぶらついてから、丸亀街商店街にある喫茶かまどへ。
お目当てはここのかき氷。
ここのかき氷はなにがどうというのはよく分からないのだが、なんせ他とは一味違って美味しい。
だから、毎年一回は暑い時期、食べにくる。
今年はこれが初めてのかき氷。
やっぱりうまい。
今日は夏のフルコースだな。

イメージ 10しかし今年はお盆が来てもまだまだ暑い。
これから暑い日がこの後もしばらく続くようである。
長いようで短かったお盆休みも終わって、明後日からはまた仕事が始まる。
まあ、皆さん暑さに負けずに頑張りましょう。


安全運行に務めてくれた鉄道関係者の皆さんに感謝。
最高の美術を見せてくれたアボリジニアートの皆さん、県立ミュージアムの皆さんに感謝。
美味しい食事、ランドマークの皆さんに感謝。
冷たいかき氷、最高の夏を提供してくれたかまどさんに感謝。
今日も最後まで読んでくれたあなたにありがとう。

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