この度、晴れてライカオーナーになった筆者。
カメラのキタムラのネット中古で名機ライカM3を買った。
併せて買ったレンズは、Lマウントのニッケルエルマー5センチf3.5。
筆者がライカのことを知ったのはいつだったろうか。
名前だけはずっと子供の頃から知っていたが、使えるカメラとして初めて意識しだしたのは十代の終わり頃だろうか。
たしか図書館でライカで撮った写真と解説とうんちくの混じった本を読んだのがきっかけだったように思う。
その時見た、ライカで撮られた写真を見て若かった私は衝撃を受けた。
それまでずっと、より鮮明でよりキレのあるきれいな写真が撮れるのが、「いいカメラ」の条件だと無条件に信じてきていたから。
ところが今目の前で展開されているライカの写真を見るとそれとはまるで次元の違う美意識が炸裂していたのである。
いわゆる「ライカの味」というやつである。
音楽でいうと、きれいなクラシック風の発声ではなく、サッチモことルイアームストロングのしゃがれ声のボーカルのような。
わあ、こんな世界があるんだとたちまち夢中になったのを覚えている。
で、その当時所有していた、小学生の頃にお年玉を貯めて買っていたフィルム一眼レフ、キャノンのAE-1プログラムがなんとなく色あせて見えたのもよく覚えている。
なぜなら、当時の国産一眼レフは味というよりはきれいな写真を撮るという方向性で作られたカメラだったから。
それ以来、筆者にとってライカは憧れのカメラとなった。
そして時は過ぎ、中年期に入った頃、金銭的な余裕も出来て昔夢中だった写真でも始めるかと思い、機種探しをしだした時。
真っ先に探したのはライカだった。
しかしここでも筆者は衝撃を受ける。
高い。
余りに高いのである。
新品だとボディで60万から100万、レンズ単体で20万から40万。
併せて買うとほとんど軽自動車一台分くらいの値段である。
その当時、フィルム機を買うということは念頭になかったから、デジタル機だと中古でも相当の出費になることが分かって少し落胆した。
それでライカを諦めて、もう一つの憧れだったニコンを買うことになるのだが、しかしその後も伏流水のようにライカへの憧れは脈々と持ち続けていた。
そして今年。
カメラのキタムラ、ネット中古を散策しているとM3の状態のいいのが出ていた。
しゃれのつもりでカートに入れるというボタンを押してみたりしていたのである。
で、一旦は諦めてカートの中身を削除したのだが、どういうわけか、ひょうたんから駒というのかなぜかホントに買うことになってしまった。
ところが、この秋は車検などが控えていて、そのことをすっかり忘れていたのだが、車検とタイヤ交換費用とライカ購入の支払いが二月連続で請求が来て、今は支払に追われております。
あはは。
でも幸せなんです。
状態のいいライカが手に入ったので。
筆者のM3はダブルストロークで品番は70万番台。
シャッターダイヤルは125分の1と60分の1ではなく100分の1と50分の一という初期型。
マニュアル露出は初めてなのであわせて単体露出計も買った。
セコニック社のアナログ針式露出計。
カメラもレンズも中古だけれど、ストラップだけはライカの純正の新品を買った。
しかしフィルム写真を始めてみて分かったのだが、今、フィルムの世界はちょうど曲がり角に来ているところだということ。
しかもそれは最終コーナーのようで。
まず買えるフィルムの数が以前に比べるとかなり種類が減っている。
で、値段は上がってきている。
またカラーネガの場合、まだ現像とプリントの出来る機械が現役なので安く仕上げることができるが、モノクロだとすでに現像の機械がなくて、今だとカメラのキタムラに出してからそれを高松に送ってそこからまた外部発注して現像しているらしい。
なので納期が十日くらい、値段も当然高い。
じゃあカラーネガの方は安泰かといえばそうでもないらしい。
まず、今の機械が壊れたら当然それで修理は不能ということだそう。
すでに交換できる部品や修理はもうメーカーが対応してないわけだから。
だから、これもいつ値上がりして納期がかかるようになるか分からない。
ある意味、フィルムを楽しむなら今が最後のチャンスかもしれないのである。
だからちょうどいい時にフィルムライカに手を出したのだなと今ではそう思っている。
でM3を使ってみての感想。
周知の通り、このM3はファインダーが凝りに凝った造りで、倍率はなんと0.93倍。
50ミリと90ミリと135ミリのレンズに対応している。
しかしM3は50ミリと一番相性がいいという。
で実際にそのファインダーを覗いてみると、50ミリの画角ってこんなに広かったんだと改めてそう思う。
普段、デジ一などで50ミリの画角を使っていると、なんとなく狭いなという印象を受けるのである。
だから筆者はそれより広い画角の35ミリとか40ミリを好んで使っていた。
それに比べると50ミリというのはなんとなく窮屈で使いにくい印象だった。
しかし、ライカM3のファインダーを見るとどうだろう。
えっと思うくらいに広く見えるのである。
50ミリってこんなに広かったっけと言うのが使ってみての印象。
でも出来上がった写真を見るとちゃんと50ミリの画角になっている。
が、ファインダーを覗くと、そこに広がるのはとてつもなく広い世界。
それで撮れる写真が変わるのかどうかはともかく、50ミリの中に無数のディテールを感じながらシャッターを押す感覚はM3でしか味わえない体験なのだと思う。
それと特筆すべきはピント合わせの正確さ。
ファインダーから少し離れたところにあるレンジファインダー窓とその二つのファインダーをもって三角測量の原理で電子式ではなく機械式で合わせるという離れ技。
しかしそれが驚くほど正確なのだ。
デジタルとは比べものにならないアナログならではのその事実に改めて感動する。
併せて買ったニッケルエルマーは古いレンズ。
これも本で読んで、ライカを買うなら是非使ってみたいと思っていたレンズ。
80年も前のレンズが現役で使える。
それだけでロマンと興奮を覚える。
描写は甘すぎず辛すぎず。
ほどよい解像にほどよい立体感。
逆光には弱いがしかしそれも「味」になる。
が、古いレンズのせいか、最近発覚したのだが絞り込んで撮影するとなにかフレアみたいなのが中央部に浮かぶのである。
カメラのキタムラの店員さんに聞くと、この症状はレンズの中にくもりかきずがあるのではとのこと。
修理すべきかそのままにして付き合うべきか今、思案中。
でもこんな風に適度に手がかかるとこも中古の面白いところ。
ある意味、幸せな悩みなのだ。
これからも折を見て、調子が悪くなってきたら適度に手を入れて末永く付き合っていきたいと思っている。
しかしこのカメラで撮った初めてモノクロのプリントを見た時は感動したな。
それまでずっと憧れ求め続けてきた「ライカの味」が思った通りに再現されていたもの。
モノクロの同時プリントはかなりの高額で最初はそれが不満だったけど、出来上がった写真を見た時、それは感動に変わった。
でもこうしてライカを買える幸せに改めて感謝。
素晴らしいカメラを作ってくれたライカ社さんに感謝。
売ってくれたキタムラさんにも感謝。
きれいな現像とプリントにも感謝。
白黒現像のラボさんにも感謝。
今日も最後まで読んでくれたあなたにありがとう。